xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

子どもは親の延長じゃない

キラキラネーム急増の背後にある「漢字文化の崩壊」

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180706-00174149-diamond-soci

という記事を読んでの感想です。

著書『キラキラネームの大研究』がある文筆家の伊東ひとみ氏によると、

「最近では、外国人のように漢字の字義もわからず、名前の音の響きや字面、デザインを重視する傾向がますます強まって、漢字が“感字”になりつつあるように感じます。実際の命名には使えませんが、『月と星』『月と光』がすてきだからと、生臭いという意味がある『腥』や膀胱の『胱』などを人名用漢字に入れてほしいという要望も多いそうです」

との事。

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膀胱の「胱(こう)」…

言われてみれば「月光」がひとつの文字になっている!

これは盲点でした。

「神」を敢えて「ネ申」と書く、ネットスラングのような感覚でしょうか。


本人が名乗る分にはどのような漢字を選択しようとも私は何も申しませんが、名前という個人を表す固有名詞に相応しくない字を名付けに使われた場合、その十字架を背負わされるのは子どもです。

「胱」と名付けられた子が仕事をする年齢になった時に自身の名前を説明する際

「月の光を横に縮めて1つにまとめた字です」

で通じれば良いのですが、下手をすると

「膀胱のコウです」

と電話口で名乗る事になるのでしょうか…


このキラキラネームの記事のコメントに

「名前は一生脱げない衣服みたいなもんで、子どもの頃は可愛いけど大人になってもその格好だと恥ずかしいと感じる。
赤ちゃんがベビー服着てても可愛いけど大人が着てると変だもん。」

というものがありました。
なんという分かりやすい例え!


人生はその殆どを成人として過ごす期間の方が、子ども時代よりも長いのです。

そのため私たち夫婦は我が子の名付けの際、娘は20~30代になった時を意識して、息子は40代になった時を意識して違和感のないものにしました。
夫婦なりに満足する名前をプレゼントしたつもりですが、上の子が幼稚園に入園してからというもの、我が子の名前は普通すぎて記憶に残り難いのではと思う時があります。

当たり障りない名前のおかげで
「うちのばーちゃんと同じ名前」
と、クラスの子にからかわれたとは娘の談。

そうか、おばあちゃんと被ったか…!

壮年期に違和感のない名前、とはいうものの、それは私たち親世代の感覚でしかなかったのかも知れません。

今の子世代が成長した時には、もしかしたら膀胱の「胱」とまではいかずとも、そうした「感字」の名前の人々が今よりも多い世の中になっているのでしょう。

娘からは小学生になったあたりで
「可愛い名前が良かったのに」
などと今の名を否定されてしまうかも知れません。

時代に合わせ、愛や恋や夢や苺のような漢字を娘の名付けに使うべきだったのかとクラス名簿を見た時に思いました。

私たちの名付けもまた、独りよがりでしかなかったのです。


第一子である娘を出産してしばらくの間、私は娘を見た時に「なぜ自分の内臓がそこ(体外)で活動しているのか」という感覚にしばしば襲われました。

へその緒がないのに私はどうやってこの子に酸素を供給しているのだろうかと寝不足の頭でぼんやり考え、
そうか、この子はもう私から独立している存在なのねと自覚するまでに毎回数秒かかりました。

そしてこの世の全ての悪意からこの子を守らねば、などという使命感が芽生えました。

だからこその誰からも失笑されない「大人になってから違和感のない名前」をプレゼントしたつもりだったのですが、時代はそうでは無かったのかも知れません。


既製品より手作り、オーダーメイド。
オンリーワンの存在にはオンリーワンの名前が相応しい。

一般的な知名度では「膀胱の“胱”」であろうと、そこに思い入れがあれば名付けに使用しても良いのではないかと私は考えています。

ぜひ、その素敵な「感字」を自分の名前に。

せっかくマイナンバー制度を国が導入したのですから、改名手続きは今よりも簡便にしたら良いのです。

自分がまず「胱」と名乗り、その名で暮らしにくくはないか確認してみると良いのです。

子どもの名前は親の自己紹介の為に使うものではありません。
子どもに名乗らせたい名前は、まずは自分の名前にしてしまえば良いのです。

かの葛飾北斎は改名を重ね、最終的に「画狂老人卍(まんじ)」になったそうです。
そのくらい突き抜ければいっそ清々しい。


一生ものの名前を決定するのに、与えられた時間は長くても数ヵ月。
しかしそこに、名付けられる本人の意思は介入出来ません。

もし改名が簡単になり、我が子が改名を望むのであれば、私はその意思を受け入れようと思います。

何故なら子どもたちは私の延長などではなく、歴とした、私から独立した存在なのだから。



「胱」についてもう一つ。
人名漢字に登用された場合、ベビーメモリアルグッズによくある、名前に関連した商品を作る担当者が要らない気遣いを余儀なくさせられるのではないかと余計な心配をしてしまいます。

メモリアルグッズの写真立ての一つに子どもの名前を取り入れたポエムをつけてくれるという商品があります。

仕上がり例では「海吏」という名前の子に対し
(ところでこの名は「かいり」でしょうか。「吏」も個人的には引っ掛かる漢字です)

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【海のように大きな心で未来へと歩む
 吏途を貫き信じる夢を叶える君であれ】

というポエムが付いてきますが、
胱だと…

あ、望み通り「月」と「光」で別けて使えば素敵なポエムになりそう!