xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

猫と妊婦の話

物心ついた頃から私の実家では猫を飼っていました。結婚してからは猫が近くにいない生活を何年も送っていますが、実家の猫は私が帰省すると今でも当時と変わらないまま顔をスリスリ寄せてくれます。なので犬か猫かと問われれば私は猫派です。
そんな猫派の私が気になる記事を見つけました。


「猫アレ」産休明け! 妊娠すると、猫がキライになるは本当?

https://sippo.asahi.com/article/12090351

 妊娠すると、ホルモンバランスの変化により、大好きだったものも嫌いになるとか、子どもに全愛情が注がれてしまってペットがかわいくなくなる……なんて聞いたことがありました。

 妊娠初期、自分がどれだけ変化していくのか分からず不安だったころ、ネットの有名掲示板で、とある夫のこんな書き込みを見かけました。

「猫好きがきっかけで結婚したのに、妻が妊娠を機に飼い猫を嫌い、手放したいとまで言い始めて困っている」

「猫アレ」とはコラムのタイトルで、正式には【猫アレルギーですけど】です。筆者の方は妊娠を機に自分が猫嫌いになってしまったらどうしようと不安に思っていたそうです。妊娠するとホルモンバランスが変化し、愛情が全て子どもに向かう為ペットを可愛がれなくなるという話を聞いた事があったからでした。
結果的に筆者の方は大好きだったお笑い芸人の顔を見るとつわりが倍増したそうですが、幸いにも猫の事はずっと可愛かったそうです。

私は里帰り出産をしたので妊娠後期と産褥期(子どもにとっては新生児期)は実家で猫と共に暮らしました。猫は私の体型が変わろうとも以前と変わらず接してくれ、赤ちゃんがやって来てからは新生児の隣で横になり、尻尾であやすような仕草を見せていました。
子どもが尻尾を引っ張るような年齢になってからは帰省した私たちを遠巻きに眺め、私から子どもたちが離れた隙に甘えてきます。
私もずっと猫が可愛いままでしたが、しかし妊婦は猫には近付かない方が良いという話は聞いた事があります。それはトキソプラズマという寄生虫が猫に宿っている事がある為です。

トキソプラズマとはネコを終宿主とする人畜共通感染性の細胞内寄生性原虫だそうです。妊婦がトキソプラズマに感染すると流産したり胎内死亡、網脈絡膜炎、小眼球症、水頭症、小頭症、脳内石灰化像、肝脾腫などに赤ちゃんがなる可能性があるとの事。それゆえ産婦人科の医師から猫を手放すよう言われたという人もいるようです。
(愛知県みよし市サンライズ動物病院のサイトより
http://www.sunrise-vet.com/ninpu/index.html

トキソプラズマは実は猫以外にも宿っている事があり、加熱が不十分な畜肉を妊婦が食べてはいけないというのもその為です。生ハムを食べたと報告した妊娠中の芸能人のブログが炎上した事があったと思うのですが、それも全て胎児の健康の為(あとは芸能人への僻みから「こんな事も知らないのか」というマウンティング)だったのです。
ではなぜ猫ばかりを危険視しているかというと、トキソプラズマは猫を終宿主としている為、猫の体内から排出される時にはオーシストと呼ばれるタマゴの形態になるからです。猫の糞便に含まれたオーシストは土の中で一年以上も感染力を持ったまま存在するのだそうです。オーシストは水に浮くので、雨水で流され広がっていくため近所に野良猫がいないからといっても油断はできません。

猫をペットにしている場合、トイレのお世話も飼い主は行わなければなりません。だからこそ産婦人科の医師の中には猫を手放すよう言う人もおり、妊婦は猫に近づくなと言われ続けているのです。
しかし日本の飼い猫のトキソプラズマ陽性率は1%である事と、陽性の猫がオーシストを排出するのはトキソプラズマに感染してから1~3週間の間だけという事もあり、猫を飼っている人と飼っていない人との感染症発生率に有意差はないそうです。ただオーシスト(トキソプラズマのタマゴ)を含んでいるかも知れない土は危険なので、ガーデニングや家庭菜園をする方は手洗いをよく行い、収穫した農作物は十分に洗ってから料理をするようおすすめします。

トキソプラズマについては以下のサイトで詳しく説明されていました。

トキソプラズマと母子感染
http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/tokiso0504.htm

トキソプラズマはネコを終宿主とする人畜共通感染性の細胞内寄生性原虫です。ヒトからヒトへ感染することはありません。 
先天性トキソプラズマ症の感染経路としては、加熱処理の不十分な肉(馬刺、牛刺、鳥刺、レバ刺、鹿刺、レアステーキなど)に生存するシストや、土やネコの糞に存在するオーシストが経口的に初感染(小腸粘膜から進入)することによって妊婦に寄生虫血症が生じます。その後トキソプラズマは血行的に胎盤に感染・増殖し、胎児の脳などの実質臓器に波及します。母体感染から胎内感染の成立までは数ヶ月を有するとされています。 
 ほとんどの症例において母体は免疫能正常で無症状ですが、妊娠中の初感染の約30%が経胎盤感染し、数%から20%に典型的な先天性トキソプラズマ症状(顕性感染:胎内死亡、流産、網脈絡膜炎、小眼球症、水頭症、小頭症、脳内石灰化像、肝脾腫など)を発症します。しかし、出生時無症状であっても、成人になるまでに網脈絡膜炎や神経症状(てんかん様発作、痙攣など)等を呈することがあり、トキソプラズマ胎内感染の実態は不明であるのが実状ですが、都市圏での頻度から少なく見積もって約0.05%(年間約600人)の発症と推定されています。

(中略)

本症の予防対策として、
 1) 食用肉はよく火を通して調理すること、 
 2) 果物や野菜は食べる前によく洗うこと、 
 3) 食用肉や野菜などに触れたあとは、温水でよく手を洗うこと、 
 4) ガーデニングや畑仕事などでは手袋を着用すること、 
 5) 動物の糞尿の処理時は手袋を着用すること、 
 6) 妊娠初期から予防や抗体検査につとめること、などをあげています。

トキソプラズマで検索したところ、NHK生活情報ブログでも分かりやすい記事がありました。

NHK生活情報ブログ
妊娠時 寄生虫 "トキソプラズマ"の危険
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/119912.html

いつ、トキソプラズマに感染したのか。
女性は日記を読み返してハッとしました。妊娠4か月のとき、焼き肉店に行き、ユッケやレバ刺しを食べたのを思い出したのです。その2週間後、首のリンパ節が腫れ、かぜのような症状が出ましたが、次第に治まったため、気にとめていませんでした。しかし、出産直後、子どもの血液からもトキソプラズマの感染を示す抗体が検出されました。
女性は「あのときに、私は何を浮かれて食べていたんだろうかと、すごく後悔しました」と話しています。

愛知県みよし市サンライズ動物病院のサイトによると、日本の衛生的な環境で育った養豚の6.8%がトキソプラズマの抗体陽性だったという報告もあるそうです。したがってトキソプラズマに人間が感染する原因は猫だけにあるのではありません。
コラム【猫アレルギーですけど】の筆者のように、つわりの時やお腹が張って辛かった時に猫が傍にいてくれたおかげで乗り越えられたという人もいますし、私も飼い猫とのふれあいがあって良かったと思っています。
それでもトキソプラズマが心配だという妊婦さんは、他の家族に飼い猫のトイレのお世話をお願いすれば良いと思います。特に【猫アレ】筆者が目にした
「猫好きがきっかけで結婚したのに、妻が妊娠を機に飼い猫を嫌い、手放したいとまで言い始めて困っている」
と書き込んだ男性は、猫トイレのお掃除専従に自分が就任すれば奥様の不安も解消され事態が好転したのではないかと思います。
あるいはトキソプラズマは妊娠時に初感染する事が危険なので、妊娠前に既に感染していれば君の身体にはもう抗体が出来ているから赤ちゃんは大丈夫なんだよと、調べた上で説得するなりすれば良かったのではないかと思います。
もちろん奥様の不安が「赤ちゃんが猫に引っ掛かれたらどうしよう」だった場合にはお手上げです。猫にも性格が様々あるので、私の実家の猫のように新生児の乳母になろうとする猫もいれば、自分以外に飼い主の寵愛を受ける存在を認められない猫もいるでしょうから。
この夫婦が書き込みの後でどのようになったのかが何とも気掛かりです。

私は生まれた時から猫のいる環境で育ちました。多頭飼いをしており私が成長する間に老猫になったせいか姿を消した猫もいれば、家族で看取った猫もいます。時には出産も目にしました。いま実家にいるのはその時に生まれた猫です。
私の実家の猫は私の子どもたちの新生児期には尻尾であやしてくれ、子どもたちが自力で歩くようになってからは乱暴に撫でられ、尻尾を引っ張られながらも攻撃の手をぐっと堪えてくれ、あと数年もすれば生命の尊さを私の子どもたちに教えてくれる事でしょう。
私は、私たちの人生に猫と過ごす時間は欠かせないものだと思っています。

トキソプラズマを調べて改めて思ったのは「手洗いって本当に大事だな」です。
インフルエンザも風邪もトキソプラズマも、予防する為には手洗いが肝要なのです。
上手に猫とお付き合いしましょう。