xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

ひよこボタン!

こんなアプリがあっただなんて私は初めて知りました。「ひよこボタン」とはV6の井ノ原快彦さんが2016年10月にNHKあさイチ」のMC時代に提案したものだそうです。このアプリ化されたひよこボタンの件が一躍話題になっています。

V6井ノ原が提案の「ひよこボタン」がトレンドワードに 混雑車内で赤ちゃん泣いたら…

https://www.daily.co.jp/gossip/2019/01/30/0012022411.shtml

 この「ひよこボタン」とは、混雑する電車やバスの中で、赤ちゃんが泣いていた場合に使用。このアプリのボタンを押すと、ひよこの「ピヨピヨ」という泣き声が起こる。これは赤ちゃんが泣くことに対し、周囲に申し訳なく思っているママやパパへ「気にしてませんよ」というメッセージを込めたもの。このアイデアは16年10月に井ノ原がNHK「あさイチ」MC時代に、「ひよこボタン」を提案していた。
 これを受け、すぐさまアプリが登場。この井ノ原の提案から2年以上が経過しているが、この日、一般男性が混雑した車内で泣き止まない赤ちゃんがいたことから、ひよこボタンを押したことをツイート。瞬く間に拡散され、「ひよこボタン」は30日午後1時現在、トレンドワード10位にまで上昇。この男性はピヨピヨ鳴らしたことから隣の紳士から「うるさいですぞ」と軽く注意されたというが「周囲が笑ってくれた。俺が注意を引けたなら本望だ」とつぶやいている。

電車内で赤ちゃんが泣いてしまったからピヨピヨ音を鳴らして周囲の注目を自分に集めたという男性の行動が称賛を浴びています。泣いてしまった赤ちゃんを連れていた方の心はどれだけ救われたでしょうか。
しかし冷静に考えてみれば騒音に注目する視線を新たな騒音で分散させただけなので、何の解決にもなっていないような気もします。ひよこボタンを知らなかった私が同乗していた場合「誰の着信音だよ煩いな」としか思わなかったかも知れません。ピヨピヨ音に驚いて赤ちゃんが泣き止むというアプリだったなら最高だったのに、と思いましたが、流石にそれは無い物ねだりでしょう。

赤ちゃんや幼児の泣き声は周囲の人間がいちはやく異常を察するために不快な音波になっているのだと聞いた事があります。それゆえ聞き慣れない方にはひたすら不快でしかなく、聞き覚えのある方には焦燥感を掻き立てるのだと。
イヤイヤ期に突入した私の2歳の息子の泣き声と比較すると、赤ちゃんの泣き声なんてもはや可愛いものにしか聞こえませんが、きっとこの日の車内では不穏な空気が漂ったのでしょう。

もしもこの男性以外にもひよこボタンを使う方がいたとして、それが大勢だった場合にはどうなっていたでしょうか。車内はピヨピヨ音の洪水に巻き込まれ、「うるさいですぞ」と軽く注意するどころか、紳士の怒りは爆発していたかも知れません。

2017年8月に歌手の松山千春さんが遅延した飛行機の機内の空気がピリピリしていた時に歌を披露し、場をなごませていた事が話題になりました。

松山千春、遅延にピリピリの機内で突然「果て〜し〜ない〜♪」→ 乗客から拍手喝采
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/matsuyama-chiharu-flight

松山千春さんは機内に居合わせた方の殆どが知っている有名人、しかも歌手なのでイラついた空気を一掃する程の、それはそれは素晴らしい歌声だったのだろうと推察します。
ひよこボタンはそれを知らない人が聞けばただの騒音でしかなく、場合によっては車内の雰囲気はより険悪なものになっていた可能性もあります。ならば松山千春さんの歌声のような、誰が聞いてもそちらに注目がいく、かつ心地よい音楽を車内に流す機能が電車にあるようにしても良いのではないでしょうか。その機能はアプリと連動し起動するようにしてみるのも良いかも知れません。
最初から赤ちゃんの泣き声や子どもの声程度は気にならなくなる音量のBGMを流すという考えもありますが、それでは必要な方に必要な音声情報が行き届かなくなるおそれがあるので実現はしないでしょう。

ならば赤ちゃんの泣き声でピリピリする社会の方を変えるしかありません。そもそも電車は静かに乗らなければならないというマナーの方を変えてみてはいかがでしょうか。誰かがあちこちで談笑し、一人で乗車している人は鼻歌を歌う。子どもが景色の中で気になるものを見つけたら、その発見を元気な声で同乗者に教える。そんな風景が当たり前であったなら、赤ちゃんの一人が泣いたところで今よりは親は白眼視を受けなくなるのではないでしょうか。

ひよこボタンのアイディアは素晴らしく、アプリ化して下さった方、役に立つ日が来るだろうとインストールしておき、そして実際に実行した方だけでなく、きっと車内には、赤ちゃんを必死であやす親御さんを心の中で応援していた方もいただろうと思います。
見知らぬ誰かに善意を表す事はとても勇気のいる行為です。ならばひよこボタンはもういっそ、もっと直接的に「(赤ちゃんが泣いても)気にしてないよ!」「頑張ってるね!」と代わりに声をあげてくれるアプリにしてはいかがでしょう。もちろん誰が押したかは分からないように、一車両だけのスピーカーからその声援は発信されるのです。3回も流れればその場の空気は作れるでしょうから、その後は誰が何度ボタンを押しても15分は作動しなければ、そう邪魔にもならないでしょう。あとは到着した駅で休憩をとるかは赤ちゃんを連れた親が判断するのです。

冒頭で紹介した記事では省かれていましたが、件の車内に居合わせた紳士は他のソースによると
「おにいさんさっきからぴよぴようるさいですぞ」
と言ったようです。

井ノ原快彦が発案した「ひよこボタン」 男性のツイートきっかけに反響広がる
https://netallica.yahoo.co.jp/news/20190201-83142272-sirabee

車内の空気が穏やかになったのは、紳士の口から「ピヨピヨ」、語尾が「ですぞ」だったからでもあったのではないかと思います。今回のひよこボタンの一件は、アプリを作動させた男性だけの功績ではなく、ツッコミを入れてくれた紳士の存在が不可欠だったのです。

電車は移動手段であり、そこには様々な人が乗り合わせます。だからこそ静かにしようというマナーに発展した訳ですが、しかし電車はあくまで移動手段であり、図書館でも試験会場でもありません。
いま子どもがいなくて赤ちゃんの泣き声をただただ不快としか思えない若い方も、いずれは子どもを連れて乗車する日が来るかも知れません。もう子どもが大きくなり育児をした日が遠くなった方も、かつては自分の子どもも他者に迷惑をかけていたのかも知れません。お互い様であると、もう少し子どもの声に寛容な社会であれば良いなと思います。



我が子はこれから電車デビューをする予定です。その時乗り合わせる方に我が子の歓声がどれだけのご迷惑をおかけするかと思うとデビュー日が決まりません。