xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

ちちの話5

ただでさえ母乳育児礼讃で追い詰められている母親が少なくない中で、またひとつ不安を煽るような研究結果が発表されたようです。


搾にゅうの母乳は授乳の母乳と成分が変わるっぽい
https://www.gizmodo.jp/2019/03/pumping-breast-milk-changes-its-microbiome.html

赤ちゃんに飲ませる母乳は、直接飲ませるときとそうでないときで、細菌叢の組成が変わっちゃうことが、Cell掲載の最新論文で明らかになりました。もっとも、組成が変わるから体に害になると断定はできないし、研究はまだ初期段階で、母乳の与え方を今すぐ変えなきゃならないということではないですけどね。

(中略)

調査の結果わかったのは、ひとくちに母乳と言っても個人差が激しく、バクテリアの含有量と種類は人それぞれだということ。個人差が生じる原因は全体のわずか30%程度しか特定できなかったのですが、出産経験や帝王切開の有無などよりも「一番違いが出たのが母乳の与え方」(同)で、これには調査班もビックリだったそうですよ?

記事が伝えた研究結果は、頑張って搾乳している方にはショックを与えかねないような内容でした。
私は財布の中身と産院の指導により当初は母乳育児を目指していましたが、第一子の時は母乳の出なさ故に赤子が生後2週間の時に受けた黄疸検査の際に医師からミルクを足すよう言われ混合育児になり、乳首トラブルで母乳を与え続ける事が辛くなった事から、第一子は生後6ヶ月あたりからミルク育児に移行しました。第二子の時には上の子の時よりは母乳育児を頑張ってみようと搾乳器を購入し、少しでも時間があれば母乳を出しておこうと思っていたところ、今度は思いのほか母乳が出るような体質になり、授乳の前にギンギンに張った固い乳房から圧を抜く為と、乳房に残った古い乳を捨てる為に搾乳器を活用しました。
結果的に搾乳した母乳を我が子に与える機会は私には無かった為、今回の研究結果は私にとっては他人事の内容なのでさらりと読めましたが、一生懸命搾乳し、母乳を冷凍保存している方などの中には動揺してしまった女性もいらっしゃるのではないかと心配しています。

搾乳した母乳はどれだけ清潔な容器を使用したとしても空気に一度触れる訳ですから、多少の劣化はあるのかも知れません。また一度冷凍した母乳を解凍した場合には僅かながら成分の変化も起こるのかも知れません。何しろ粉ミルクなども電子レンジが禁止なくらい繊細な成分なのですから。
それに対し乳首から直接飲む母乳の場合は、出来立て新鮮な乳を真空状態で提供されているようなものです。更に直母(ちょくぼ、乳首から直接母乳を与える事)は母親の乳首の皮膚にいる常在菌も赤ちゃんは取り込む訳ですから、そのあたりの事が細菌叢の組成の変化をもたらすのではないかと思いました。
(どのように直母状態の乳を採取したのかまでは調べていません)

アニメ「クレヨンしんちゃん」でラーメン屋を営む野原一家という設定の時に、しんのすけが客に出すラーメンに指を入れて運んだところ、とても美味しいラーメンになった、という話がありました。母に注意されたしんのすけが今度はお盆に載せてラーメンを運んだところ客の反応がイマイチになり客足が遠退いた事から、父は配膳途中のしんのすけの指から出汁が出ており、それがラーメンを美味しくさせていたのだと気が付くのです。
なお話のオチとしては「子どもの指をスープに入れる事は衛生的にどうなのか」という社会問題に発展し、店は再び閑古鳥が鳴くようになったのでした。

我が家の上の子はミルクに移行し母乳を貰えなくなったあたりから指吸い(指しゃぶりレベルではない)が始まりました。更には私の髪を自分の親指に絡ませた上で指吸いをしていたので、私の実家の面々は、この子は私から何がしかの成分を吸いとっているに違いない、という認識でいました。恐らくそれは哺乳瓶からは得られない、私の出汁を求めての事だったのかも知れません。

私たち人間は様々な菌を活用して食品を加工しています。青カビの生えたチーズが重宝されているように、菌の組成は食べ物にとってとても重要な事です。直母と搾乳の細菌叢の組成の違いは、母親の皮膚の常在菌がどれだけ含まれているかによる変化でしかないのではないでしょうか。

先月放送していたEテレ「すくすく子育て」の母乳とミルクの回では、ミルクだけで育つと愛情が足りない子になると病院で習ったという母親が登場しました。この方は母乳で育てなければ赤ちゃんは情緒不安定な子に育ってしまうのではないかという不安を抱えていらっしゃいました。

「あなたは、あなたが食べたもので、できている」と謳う食品会社のCMがありました。確かに私たちの身体は何を食べたかによって変化する事があります。しかし私は、直母と搾乳程度で何かが変わるとは思いません。ましてミルクだけで育ったからといって情緒不安定な子になるとは私には思えません。赤ちゃんの心の成長に必要なのは栄養よりスキンシップだという事は心理学者ハリー・ハーローの猿の実験で証明された通りです。ミルクの出る針金製の母猿人形より、子猿はミルクの出ない布製の母猿人形の方に愛着行動を示したという実験です。

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これは私が第二子を産んでから、第一子の母になったものの母乳が出ないと悩んでいた友人にメールした内容なのですが、
「私たちが赤ちゃんだった頃は役場で粉ミルク缶が貰えたくらいミルク育児推奨だったみたいだし、実際に私の事は婆ちゃんがミルクで育てたらしいよ!
でもこんなに健康に大人になったよ!
ミルクで育って何が悪い?
ミルク育ちなめんなよ!」
自分の第一子の時の罪悪感も吹っ切る為に語気が荒くなりましたが、こんなメールを送りました。

大事なのは育児をする人がストレスなく子育てできる事だと思います。憂鬱な気分が長い親に育てられた子の方が、よほど情緒不安定な子になるのではないでしょうか。まして親のストレスの捌け口に子どもが使われる事などあってはなりません。
直母や搾乳、ミルクにこだわるよりも、穏やかな笑顔の多い特定の大人からのスキンシップの多さの方が、子どもの発達にはずっと大事な事だと思います。