xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

たぶんそれは自分の心の声

夫の母が
「○○さんのところのお嫁さんは本当によく出来た人で~」
と言う度に、私は心の中で
(はいはい、どうせ私は不出来な嫁ですよ)
と言い返していました。

以下の記事の問題は、この心理に通じるものがあるのではないかと思いました。


「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養」 液体ミルクのパッケージ文言に不満噴出
https://www.j-cast.com/2019/03/13352586.html

   消費者庁の規定では、液体ミルクおよび粉ミルクには「乳児にとって母乳が最良である旨の記載」を義務づける。さらに、「当該製品が乳児にとって最良であるかのように誤解される文章、イラスト及び写真等の表示は望ましくない」と要請している。

 実際、江崎グリコの「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、パッケージの目立つ位置に「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」と書かれている。

 この表記を見て罪悪感を覚える人は少なくないようだ。一般のツイッターユーザーが3月11日、「『母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です』って文章...要る?」などと投げかけると7000ちかくの「いいね」を集め、

 「見る度に胃の辺りがギュンってなるんだよな...」
 「母乳に近い栄養成分だから、これはとてもいい商品だよ!と言いたいのだろうけど、母乳が出なくなった私には辛い言葉」

と共感を呼んだ。

○○さんのところのお嫁さんが「よく出来た人」なのも夫の母の中では事実だろうし、母乳が赤ちゃんにとって最良の栄養なのも事実なのでしょう。
しかし世の中には事実を指摘されると面白くなくなる人もいるものです。
自分の心の中にある後ろめたさが自分の心をざわつかせ、事実を素直に受け止められず、「どうせ私は」という気持ちが沸き上がってしまうのです。

自身にも言える事ですが、子グマ連れの母グマが最も危険なように、妊娠中~産後の女性はあらゆる事に神経質になるように思います。
私は妊娠中は、一歩歩くのにも転ばないよう気を張り詰めていました。感覚としては綱渡りのロープの上を常に歩いているようなもので、私がひとたび転びでもしたら即、腹の中の子が死ぬとすら思っていたような緊張感をもっていました。
産後に子連れで歩いている時には近くをすれ違った人が咳をしただけでも殺意がわきました。
これはひとえに「赤ちゃんの命を預かった重圧」が成せるもので、その重責が果たせるか自信が無いあまり周囲の何気ない事柄が不安を揺さぶり、不安を誤魔化す為に無駄に周囲を攻撃したり、自分の心を傷付かせてしまったりするのではないかと思います。

「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」
確かにそうなのでしょう。
では、最良の栄養を十分に出せない自分は無能だと言いたいのか?
(私がお母さんのせいで最良の栄養をあげられなくてゴメンね)

この文言に反感を抱く方を本当に傷付けているのは、自分の心の中にある理想像だと思います。
「最良の栄養をあげられない」という罪悪感が自分の心を攻撃しているのです。

私は一人目の子の時に完全母乳を目指しましたが、我が子が生後2週間の時に母乳育児推奨の産院の医師からミルクを足すよう言われました。我が子の体重の増加がよろしくないと説明され、母子手帳に「21g/日」と記入されました。(現在の体重➖出生時の体重)➗生後日数という計算式です。上の子は計算上、産まれてから一日あたり21グラムしか増加していないと数値で示されたのです。
母乳が足りない=母親失格などとショックを受けている場合ではありません。とにかく我が子の体重を増やさねば。目的の為には手段を選ばず。このあとガンガンにミルクを足し、1ヶ月健診時には「46g/日」にまで我が子の体重を増やす事に成功しました。
なお私の母乳がよく出る中で育った二人目の子は1ヶ月健診時に「48g/日」でした。いかに体重を増やすかが大事な新生児期、上の子には最初からミルクも併用していればスタートダッシュが出来ていたのかと思うと、母乳にこだわっていた私の自己満足さが上の子に申し訳ないです。


母乳が最良なのは自然の節理なのかも知れませんが、それに囚われたあまり目的と手段を履き違えてはならないのです。空腹に泣く赤ちゃんのお腹を満たしてやる事が大人の重大な使命なのです。
自然界では母乳を出せない母の子や、餌を上手に補食できない個体は死ぬかも知れませんが、人間は社会全体で自然と戦い、自然に対抗する為に知恵をつけてきました。人間の知恵も生物としての能力のひとつです。人間を社会全体でひとつの生き物として考えるならば、誰かの知恵や苦労の果てに得たものも人間全体の能力です。生き物が自身の能力を活かして生きる事は当然の事です。
粉ミルクは人間が編み出した知恵の結晶、その知恵を活用する事を悪と言うのならば、小麦粉でパンを作る事も悪になりはしないでしょうか。

一昔前は炊いたお粥の上澄み液を布に染み込ませたものを吸わせて育てたという話や、怪談話の「幽霊飴」のように母乳を出せないならば飴で赤ちゃんに栄養を与えたという話もあります。
赤ちゃんを育てる、生かす事こそが授乳の目的なのです。

「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」
「この製品は母乳に近い栄養成分です」

粉ミルクに書かれた文言は安心してお使い下さいと紹介しているだけなのだと、どうか冷静になって頂きたいと思います。

誰もあなたの事を「最良の栄養を出せないダメ母」とも、姑が暗に私の事を「不出来な嫁」と責めている訳でもないのです(たぶん)。
ただただ客観的事実を述べているだけで、比較している気持ちなど無いのです(きっと)。

傷付いた自分の心を慰めるよりも先に、赤ちゃんを大きく育てましょう。子どもが幼稚園児くらいになれば様々な添加物の入ったお菓子にも出会うでしょう。中学生や高校生にもなれば、親の知らぬ所で果たして何を食べている事か。そこまで育った時にミルクに書かれた文言を思い返して頂きたい。母乳かミルクかなど、育ってしまえば大差は無いと気付くでしょう。

ミルクの文言で胃の辺りがギュンとするのは、赤ちゃんがあまりにも小さいからこその不安でしかありません。
あなたを責めているのは、あなたの心です。