xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

だからこその自然淘汰

以前、不妊治療を経て産まれた子には障害児が多いという記事を読んだ事があったので、今回読んだ記事に関しては「そりゃそうでしょう」というのが私の率直な感想です。


体外受精の着床前検査「異常が7割」という衝撃
https://toyokeizai.net/articles/-/271405

 日本では今、胚を子宮に戻す「胚移植」が全国で年間25万回以上も行われているが、その多くが、実は、染色体異常胚を戻しているということになる。

 今回の臨床試験は35歳から42歳という年齢の高い女性を対象にしたので、正常胚がここまで少なかったのだろう。とはいえ、日本の体外受精は、この年齢層がボリュームゾーンだ。

私には流産の経験が無いので当事者の心情を理解する事は出来ません。しかし、第一子の時に妊娠性糖尿病が発覚し緊急入院を医師から告げられ、入院に必要な用具を取りに自宅へ戻る途中、お腹の子がどうなってしまうのか不安で不安でたまらなくなり、泣きながら車を運転した経験ならあります。
ただ私の血糖値が高いというだけで、あれだけ我が子に申し訳ない気持ちでいっぱいになり涙が溢れたのですから、流産がどれだけ辛いものなのかは想像を絶します。私を出産する前に幾度か流産経験をしていたという実母は、還暦を過ぎた今も水子供養を欠かしません。

不妊治療でせっかく胚(受精卵)を子宮に戻し、妊娠反応が出た後での流産はまさに天国から地獄の衝撃でしょう。その理由が胚の染色体異常という手の施しようがない理由だとしても、きっと自身を強く責めてしまう人も少なくないと思います。

本来、卵子が受精卵になるまでには3億個もの精子のレースが子宮内で繰り広げられます。酸性に弱い精子が子宮という酸の海の中を泳ぎ、どのライバル精子よりも早く卵子の内部に潜り込むという障害物競争を経て、その勝者のみが受精卵になれたのです。こうしたレースを繰り広げる事によって卵子の周囲にまで到達する精子は、いずれも一定のレベルの高さをもつ個体である可能性を高めているのです。
ところが不妊治療の体外受精では精子は酸の海を経験せず、顕微受精に至っては何の競争もせず棚ぼたラッキーで表彰台にまでいきなり誘導されてしまいます。だからこそ、本来レース中に他の優秀な精子に振り落とされる筈だった、遺伝子に欠損のある精子卵子と受精してしまう確率が自然妊娠よりも高くなる為に、不妊治療では染色体異常が多く発生してしまうのだそうです。
つまり不妊治療での染色体異常による流産は、子宮の中での自然淘汰を経験していないからこそ多く発生するものなのだと言えるのです。

そもそも、卵子も優秀なものから成熟し排卵されていくとどこかで読んだ事があります。食料事情が良くなった現在では女性の初潮(最初の生理)の次期も早まっているそうです。良い卵子から消費されてしまったならば、自身の妊娠のリミットに気付き不妊治療だと焦りだした頃には質の良い卵子になれる元の数はだいぶ減ってしまっている事でしょう。
同じ40代でも経産婦がまだまだ子どもを産めるのは、上の子の妊娠から産後およそ2年、場合によっては更に次の子の妊娠から産後およそ2年生理が止まっていた為に、その間に卵子という残段数が決まっている銃の無駄打ちをしていなかったからだと言えます。
かつて、結婚したなら早々に子作りを開始するようアドバイスする目的で「羊水が腐る」と発言し謝罪騒ぎになったアーティストがいました。羊水自体は妊娠してから作られるものなので何歳で妊娠しようと新鮮ですが、しかし卵子が経年劣化するのは事実です。あのアーティストの発言は「卵子が古くなっちゃうよ」あたりが適切だったのではないかと思います(これも炎上不可避だと思いますが)。

一方で精子は都度生産だと思われていましたが、やはりこちらも加齢とともに劣化していくそうです。現代社会の生活は精子の質を落とすとNHKクローズアップ現代「“精子力”クライシス」にて放送されました。精子の中でもほとんど動かないもの、見た目は元気なのにDNAが傷付いているものなどが存在し、加齢や不規則な生活などでその割合が増えていくのだそうです。
そのような精子がたまたま不妊治療でゴールとなる卵子と結合されれば胚(受精卵)に遺伝子異常が生じやすくなるのも当然です。精子が子宮の中を泳ぎきれない弱いものであった事が不妊の理由だったならば、人工受精で胚を作り出しても子宮の中で育たないのは順当の結果です。

結婚する、しない。
子どもを産む、産まない。
これらは本人の自由ですが、遅らせれば遅らせる程に期待したゴールへの道のりが遠くなる事は十代の頃に男女とも教えられるべきではないでしょうか。

生まれてこれない染色体異常の胚(受精卵)を移植されても、母体は多大なる負担と精神的ダメージを被るだけです。
娘が健康に育ち孫に囲まれてもなお、水子供養を欠かさない実母の背中を思い出すと、せっかくの不妊治療なのですから着床前検査(異数性検査=PGT-A)は実施して欲しいと私は思います。
命の選別と言われようが、胚にも選別の場は必要です。本来あるべきものだからこそ「自然淘汰」なのですから。