xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

自虐と謙遜とモラルハラスメント

他人に身内の事を話す時に、大卒で料理上手、家計管理も完璧で給料も十分に得ている妻の事でも
「うちの愚妻が」
と表現する場面があります。
こうした例は他にもあり、息子がスリムでも「豚児」、偏差値の高い学校の生徒でも「愚息」と言う事もあります。

いずれも本心からそう思っている訳ではなく、相手を上げる為に自分たちを下げているだけの日本語の物の表現なのですが、そうした表現をストレートに受け止め、嫌悪感を抱く人が増えてきたように思います。
また、相手が何を意図してその言い回しを選んでいるのかも考えずにそのまま受け止め、「言っても良い言葉」なのだと勘違いして不必要な場面でそれを使用してしまう人もいるように思います。
モラルハラスメントが増加しているような気がするのは、自虐ネタや謙譲語を誤って理解している人が増加している事が背景にあるのでは、などと私は勘ぐっています。


これってモラハラ?夫が放つ信じられないひとこと
https://limo.media/articles/-/10731

「私も一応パートに出ているのですが、子どもがふたりいるので働く時間もなかなか確保できません。下の子なんて保育園には入れず、ギリギリ見つかった幼稚園は預かり保育もしていないし…だから収入も少ないのですが、夫はなにかと『お前はいくら稼いでんの?』と聞いてきます。大きなため息とセットで。

お茶が冷えていないだけで不機嫌になるし、『俺と同じぐらい稼いでから手抜きしろよ』と家事の行き届かないところを指摘されることも。『お前は俺より下なんだから』と言われたこともありますよ」これって外野から見れば立派なモラハラ

(中略)

夫婦には本来、上下関係なんてないはず。それなのに、こうして妻を格下扱いして、コントロールしようとする人もいるんですね。

お互いの存在や意思を尊重できる夫婦でなければ、いずれ精神的に苦しくなることも。夫が日頃から“俺のほうが上!”というような態度を取っているなら、私ってモラハラ被害者かも? と疑ったほうがいいかもしれません。

夫婦の上下関係を示す言葉のひとつに「亭主関白」というものがあります。亭主(夫)が関白のように家庭で威張っている状態を指す言葉です。
それに対して「かかあ天下」という言葉もあり、こちらは家庭内で妻の権威が夫よりも高い状態を指します。
モラルハラスメントは、この「亭主関白」「かかあ天下」を履き違えているからこそ起きるものなのではないかと私は思います。何故ならこの国には「関白」の上には常に「天皇」が存在しているからです。
「亭主関白」は、外では偉ぶっている夫も、実は夫婦二人の時には妻を大事に思っていたり、偉ぶる代わりに妻が生活に困らないよう配慮していたりと、妻の立場を尊重していたからこそ成り立っていたに他なりません。関白が強権をふるえるのは、天皇の承認があってこそなのです。

「誰のおかげで生活できていると思うんだ」
こちらは専業主婦の妻に対しての夫からのモラハラ発言の代表例ですが、それに対しては
「誰のおかげで安心して仕事に専念できていると思うんだ」
という反論を抱く人もいると思います。

「お前が子どもたちや家の事をしっかりやってくれているから俺は安心して仕事に集中できる」
こちらは子どもの運動会と自分の会議の日程が重なり、乳児の下の子をおんぶしながら上の子の幼稚園の運動会の親子競技に出場する事になった私に対し夫が言った言葉です。
第一子の初めての運動会、夫だって楽しみにしていたのです。子どもの運動会の日に好きで仕事に行く訳ではない事を知っているので私は何とも思いませんでしたが、夫には罪悪感があったようです。それを「仕事なんだから仕方が無いだろう」などと逆ギレする訳でもなく、純粋に感謝として私に伝えてくれるので、私もあなたのおかげで生活が出来るのだと素直に言えるのです。

私たちは夫婦分業を良しとしているので子どもの事や家庭内の事はいわゆる私のワンオペで回しています。私は私で専業主婦なりに役目があると夫は思ってくれているので、例え機嫌が悪い時でも「誰のおかげで生活できていると思うんだ」などと言われた事は私にはありません。
どちらが偉いかなどという争いがそもそも無いので、上下関係を確認させるような発言をする必要が無いからだと思います。

モラハラ発言は相手が自分よりも下位にいる事の確認作業なのだと思います。自分を上げるのではなく、相手を下げさせる事で相対的に自分を上げようとしているだけなのだろうと思います。
夫婦には本来、上下関係などありません。お互いを尊重していれば、モラルハラスメントなど起こる筈がないのです。
結局のところモラルハラスメントをする人は、自分の立ち位置をいちいち確認しなければ立っている事もままならない自分の不安定さを相手にぶつけているに過ぎないのではないでしょうか。

芸人さんの自虐ネタは、それが「ネタ」だとお互いに分かっているからこそ成立します。
日本語の謙遜の表現は、それが単なる言い回しのひとつにしか過ぎず、実際に身分が下になる訳ではありません。受け手も自分を「上げさせて貰っている」と認識しているからこそ意味のある表現なのです。
モラルハラスメントをする人はネタをネタとして認識しておらず、様式美を理解できていないように思います。だからこそ「誰のおかげで生活できていると思うんだ」などと、言わなくても分かりそうな事をいちいち口に出させるのではないでしょうか。
現代人はお金がないと生きていけません。そのお金を持ってきてくれる人は確かに偉いでしょう。共働き夫婦なら、より稼いでくる方が素晴らしいかも知れません。しかし、「あなたのおかげで生活できている」事など口に出さなくても分かりそうなものなのですから、確認行為などそもそも必要無いのです。

モラハラをする人は結局、自分を尊重して欲しいのだと思います。自分こそが相手よりも上だと知らしめなければならない程、自分に自信がないのです。
夫婦に上下関係などありません。あるように思えたならば、それは妻が意識的にへりくだっており、夫はそれを理解した上で「上であるように」振る舞っていただけに過ぎないのです。亭主関白が主流だった頃の夫が偉そうにしていられたのは、妻がそのように振る舞う事を受け入れていたからに他なりません。相互の信頼関係があってこそだと思うのです。
夫が働いて賃金を得て、そのお金で妻子が生活できているならば、妻が家庭内の運営を滞りなく回しているからこそ、夫は安心して家を空けていられるのです。ただでさえ社会に出て働くにはストレスがかかると言うのに、内憂外患では仕事に集中していられません。
時計の部品に上下関係はありません。何かが欠けていては時計は機能しなくなります。夫婦とはそういうものなのではないでしょうか。

結婚する相手がモラルハラスメントをする人かどうかは、芸人さんへの態度を見れば何となく推察できるかも知れません。私の好きな芸人さんを端から馬鹿にするような発言をするカップルの彼氏を目撃し、何となくそんな事を思いました。