xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

いてくれるだけで

男性の育休義務化への議論が進んでいるようです。その中には、せっかく夫が育児休暇を取得しても不慣れな人がするので育児も家事も中途半端になり、結局は妻が夫の世話をする羽目になるのでは、という意見もあるようです。確かに妻が育児からも家事からも夫の世話からも手を離せない結果になるならば義務化をしても何の意味もなさないケースもあるように思います。

先日の土曜日の事です。普段は平日休みの夫がこの日は休みだったので、子どもたちは車に乗ってどこかに出掛けられるかも知れないと朝からウキウキそわそわしていました。特に平日は幼稚園に通っている上の子の期待は顕著でした。私と夫が揃っている時には夫が運転手になる事が殆どで、夫は長距離運転も引き受けてくれるからです。
ところが、ゆっくり起きてきた夫は午前中は寝間着のまま仕事の資料作りを開始し、11時半を過ぎても立ち上がる気配がなかったので私は昼食の準備に取りかかりました。
夫は朝食も昼食もパソコンに向かいながら食べました。食べた後の食器もそのままにしていたので、タイミングをみて私が片付けました。連日の仕事で夫は疲れており、更に気持ちは月曜日の会議の事で一杯だったようです。なお日曜日は出勤の予定でしたが、その日は資料作りなどしていられないスケジュールになっていたようでした。
昼食が終わると子どもたちの「お出掛けしたい」コールはますます盛んになりましたが、資料作りを一段落させた夫は、あろうことか「横になる」と寝室に移動してしまいました。
外出するなら夫がパソコン作業を一段落させてからの昼食前(この場合の昼食は外食になる)、あるいは下の子をドライブ中にお昼寝させる為に昼食を済ませてからの午後イチから、というのが我が家の暗黙の了解になっています。昼食を摂ってからも夫が寝間着から着替えないのならば、今日は出掛ける気はさらさら無いという事を意味していました。

2才の下の子はまだお昼寝が必要なので、夫は下の子にも寝よう、と誘います。殆どの場合、父親(のスマホ)が大好きな下の子は喜んで一緒の布団にもぐり込み、しばらく二人でスマホであれこれ検索して楽しむのですが、この日は違いました。
「くるま、乗るの!」
「おーきーて、おーきーて!」
2才児は己の語彙力の限りを尽くして一生懸命ドライブに行こうと説得を続け、それでも動かない父親を前にとうとう泣き出しました。
下の子は激しく泣くと嘔吐します。昼食後すぐだった事もあり、布団の上で吐かれでもしたら大変なので、私が運転手で子どもたちを連れ出す事にしました。

夫には休日でも様々な業務上の電話がかかってきます。私は同じ会社で勤務していた経験がある為に夫の立場を知っているので、休みをきちんと休まない夫、休ませてくれない会社に不満はあれど承知はしています。
子どもたちの声が入っては業務の電話に差し障りがあるので、夫は自宅ではトイレに籠ったり駐車している車の中に移動したりして電話を受けます。この日もどうせこれから何本か電話がかかってくるのだろうなと思われたので、私運転でのドライブは子どもたちの車で外出したいという願いを叶えつつ夫に休んでもらう事と、落ち着いた環境で夫に電話をとらせる目的もありました。

別にどこか出掛けたい目的が私たちにあった訳でもなかったので適当に車を走らせると、出発して10分もしないうちに下の子から寝息が聞こえてきました。上の子は平仮名やカタカナが読めるようになっているので、街の看板を一生懸命に読んでいました。そして知っている道に来ると「ここは○○に行く時に通った所!」と嬉しそうに教えてくれました。
普段、自宅と幼稚園の徒歩での往復だけの上の子は適当なドライブでも満足してくれたようです。私と下の子(未就園児)は食料品や日用品の買い出しに車を使う時はありますが、そうでない外出にはやはり特別感があり、私もそれなりに楽しめました。そしてハンドルを握りながら何となく、夫に育児休暇があっても我が家ではこんな日が多いのかも知れないなと思いました。


「男性の育休義務化」が夫婦の危機を招くワケ
産後うつの原因が「夫」になってしまうかも
https://toyokeizai.net/articles/-/287371?display=b

という記事のケース2には、せっかくの長い休みだからと資格の勉強をしようとする男性が登場します。育児休暇が何をする為の休みなのかを理解しておらず、「休み」だから余暇を有効利用しようというのでしょう。その休みをあくまで自分の為の休暇だと考えている事、そして家事育児を甘くみている事に妻は不満を抱いただろうなと思います。
子どもがどの発育段階で男性が育児休暇を取得しようとしたのかはこの記事では分かりませんでしたが、赤ちゃんが産まれる前での出来事であるならば私にも思い当たる節があります。
実を言えば私も、育児の合間に何か勉強でもしようかと、かつて放り投げたとある資格の問題集を実家から自宅に持ち込んでいたのです。子どもが生後3ヶ月になった頃には育児にも慣れ、時間に余裕を持てるようになっていたのでその問題集をしばらく解いてみましたが、そもそも独身の頃に飽きて挫折したものだったので、その時もやはり途中で飽きてしまい続きませんでした。記事の男性、そして私の夫ならば家事育児の合間であっても何らかの成果をあげていたのではないかと思います。
この記事のケース2の妻は育児休暇を自分の余暇だと認識している夫に不満を抱いたようです。しかし私は夫の仕事中毒に感化されているせいか、仕事のステップアップになるならばそれはそれで有りだなと思ってしまいました。家事育児の合間に時間が出来たならば、業務に役立つ勉強は、やって悪い事ではないと思うのです。
何しろ育児休暇中は会社からの給与は受け取れません。雇用保険から育児給付金が支給される仕組みになっています。その金額の算定方法は、女性ならば産休に入る前の標準月額「基本給+交通費以外の各種手当で、健康保険、厚生年金の保険料が確定される等級」を30で割り、さらにその1日分の2/3に休暇の日数をかけた額なのだそうです。男性も同じような計算の仕方になるだろうと思います。
簡単に言えば育児休暇中は、働いていた時よりも受け取れるお金が減るのです。妻が専業主婦ならば夫の収入のみが頼りなのに、夫が育児休暇を取得したら収入が減るのです。残業代を普段からあてにしていた場合はきっと、受け取れる金額の低さに驚くでしょう。子どもが生まれ出費が増え、学費の貯金もしていかなければならなくなる時に収入が減る。ならば、職場復帰後に給与アップに繋がるように、仕事に役立つ資格や知識を取得する事は長い目で見れば悪い事ではないと思うのです。

記事のケース2の夫婦で、普段どれだけ男性が家事をしていたのかは分かりません。この男性が私の夫のように、言えば不満も言わずそれなりにやってくれる家事レベルで、育児休暇中に家事育児の合間に資格の勉強がしたいと言うのならば、やって貰ったら良いのです。男性がしっかり家事育児を分担し、昼夜問わずの新生児育児に疲れ果て、テキストを開けなかった翌日に
「ほらね、だから育児しながら資格の勉強なんて無理だって言ってたのよ」と育児の大変さをお互いに労いながら、育児に対する男性の認識の甘さを笑い話にしてやれば良いのです。
大人二人がきちんと分担するならば双子でもない限り新生児育児もそうそう大変ではないとは思いますが。

仮に資格の勉強ばかりにかまけて家事も育児も分担してくれない夫だとしても、私はそれはそれで良いと感じました。
夫に昼寝をさせる為に子どもたちとドライブに出掛けている途中、ハンドルを握りながら、いつもの車での外出とは心のありようが違う事に気が付いたのです。
それは私に何かあっても、夫がすぐに来てくれるであろう心強さでした。
私が交通事故を起こしてしまったとしたら、電話すれば夫は現場にすぐに来てくれるに違いない。何故なら今日は自宅にいて、私からの電話もすぐに受け取れる状態だからです。
私が即死でも、きっと後部座席の子どもたちはチャイルドシートのおかげで即死は免れるだろう。誰かが救急車を呼んでくれ、夫に連絡が入れば、後は夫が何とかしてくれるに違いないという安心感がありました。
自宅にいる時もそうです。私が大怪我をしたり急病で倒れたり、突然死したならば、夫はすぐに対処してくれるでしょう。きっと夫は子どもたちを自分の実家か私の実家に預けに行ってくれるので、子どもたちを空腹のまま泣かせる事だけは避けられると思うのです。

ワンオペ育児の何が不安かというと、育児者である私が育児を出来なくなる事態に陥ってしまう可能性がある事です。上の子にとって玄関の扉はまだ重く、一人で開ける事もやっとの状態です。仮に外に出られたとしても、ご近所の誰に助けを求めたら良いか分からないでしょう。もし私が突然死したならば、子どもたちは夫が帰宅する夜まで大人に窮状を訴える事が出来ないのです。
(電話のかけ方は上の子に小学校入学前に教える予定です)

だからこそ夫が近くにいる、連絡がすぐにとれる状態にあるというのは、とてもとても心強いのです。
家事育児をやろうとしなくても構いません。休みでずっとパソコンと向かい合っていても、私と何か話をしている時に仕事の電話だからと会話を中断されても、夫が自宅にいてくれるだけで私にとってはだいぶ助けになるのです。
男性が育児休暇を取得しても、普段から家事育児に携わっていなければ戦力にならない男性も多いかと思います。ならば夫に不慣れなタスクを実行して貰うよりも、夫には妻の精神的なサポートに徹して貰った方が助かる妻もいるのではないでしょうか。

女性側も、男女同権を傘に着て、家事も育児も夫に何でもかんでも自分と同じ行動をとるよう期待するのではなく、自分が実行出来なくなった時に子どもの最低限の世話をする自分のスペアのようなものと考えれば気が楽になるのではないかと思います。
親になった自覚は男性は女性よりもゆっくりと芽生えるそうなので、育児休暇を取得しても妻の期待通りの行動をとれる夫は少ないのではないかと思います。夫が自分と同じレベルで家事育児が出来ない事にイライラするくらいなら、いっその事、自分が倒れた時の保険だと考えてみてはいかがでしょうか。

あなたが居てくれるだけで私は心強い。
きっとその言葉は、男性に父親としての自信を与えてもくれると思うのです。