xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

そこまで夫に求める?

私は第一子の時も第二子の時にも里帰り出産をしました。夫の地元は私と同じ地方ですが、その時は仕事の為に車で二時間の距離に住んでいたので、私や子どもに会いに来るのは休みの日だけでした。
それを不満に思った事はありませんし、それが「里帰り出産」というものだと思っていました。自分や子どもは自分の実家に守られていた為、夫の出番はなく、また私たちも夫に何かをして貰おうという気はありませんでした。気を使いながら私の実家の玄関をくぐる夫の姿を見る度に、一ヶ月検診が終わって落ち着いたら里帰りが終わり、自宅で怒濤の子育てライフが始まるのだから、いま貴重な休みに無理をしてまで私の実家に来る必要はないのに、とすら思っていました。
ところが世の女性たちはそうは思わない方が多いと知り面食らってしまいました。


出産で里帰り中の妻に「あなたは育児から逃げてる」と責められ困惑する夫に説教相次ぐ
https://news.careerconnection.jp/?p=78681

ヤフー知恵袋に9月13日、「嫁にめちゃくちゃ言われました。」という相談がありました。相談者は、出産後里帰りした妻の実家に、ほぼ毎日通っているという夫です。出産時は立ち会い、できる限り面会にも行き、仕事後や休日にはほぼ毎日妻の実家に行き、日付が変わる前に帰宅する日々でした。

ある日妻から、休日前なので泊まって欲しいとお願いされましたが、義母に気を使って断ると、妻の態度が一変。

「貴方は育児から逃げてるし自由な時間があっていいわね」

と責められ、困惑しています。

自分なりに可愛い息子に会うために通ってきたのに、そんな風に言われた夫は、「何か今まで俺がやってきたことを否定されてるような気がしました」と気落ちしています。寝不足になりながら息子の面倒をみていることには感謝しているものの、謝っても許してもらえないそうです。「妻のことは大好きなので、これ以上仲を悪くしないためにはどうすればいいでしょうか」と問いかけていました。

この質問は注目を集め、300以上の回答が寄せられました。多くは、出産・子育て経験のある人からで、

「会いに行っているだけですか?育児には積極的に参加されていますか?もしくは奥様のことをねぎらって差し上げてますか?」
「たとえ毎日来ていても、奥さまの実家からお客さま扱いでおもてなしを受け、赤ちゃんも大変なことは結局自分や親がしていて、質問者さんはラクな事ばかりしているのが気に入らないのでは」

など、夫に厳しい声が飛んでいました。

夫が育児をやってきた様子が書いていないため、義実家に行ってもおむつ替えひとつせず義母の作った夕飯を食べて帰るだけなのでは……と推察されます。


私は女ですが、この男性投稿者を非難する気持ちは抱きませんでした。むしろ毎日子どもに会う為に妻の実家に来てくれるなんて、パパの自覚があって素晴らしいなとすら思いました。
何故なら男性の妻は里帰りしている状態であり、男性は妻実家にとって正しく「お客さま」なのですから。
男性にとって妻の実家とは、ゲームのラストダンジョンに匹敵する場所だという事を女性たちは忘れてはいないでしょうか(それとも我が家だけ?)。

妻が実家に里帰りしているという事は、妻は今、「娘」に戻っているという事です。私のケースで考えてみると、妻の実家は妻の母親や父親の領域なので、夫が立ち入る隙はなく、その中で新参者である夫が何かをしようと思うのはかなり気が引けるものなのではないかと思います。
玄関をくぐるのすらいまだ緊張する夫は、私の実家ではお手洗いに行く事も遠慮し我慢する為、帰宅途中にコンビニに飛び込む事がよくありました。そんな状態の夫に私の実家に泊まって赤ちゃんのお世話を一緒にしようと提案する事は私には思い付きませんでした。
私の実家ではトイレすら借りられない夫が泊まるとなると、大きな課題が発生します。自分が息をつける場所は私と子どもがいる部屋だけ、というラストダンジョン内において、風呂や歯みがき、夜間のトイレをこなすという事が夫にとってどれ程の重圧になるでしょうか。
夫にとって私の実家は、私との結婚を承諾してもらいに何度も私の父に頭を下げた場所です。結婚し何年経過してもその時の事が思い出されるらしいのに、もし私の父と二人きりで夜の廊下で遭遇したならば、かなり気不味い思いを夫だけがすると思うのです。

家事も男女平等が普通の今時の奥さま方には噴飯ものかも知れませんが、妻が夫の実家に行けば妻には家事労働という役割が期待されます。しかし考えようによっては、家事をするという名目で、その家での居場所や立ち位置が用意されるのです。
ひるがえって男性の場合で考えると、婿に台所に立つなどの家事を期待する舅姑は殆どいないと思うので、男性は妻実家では身の置き所が無いのです。
結果、夫は妻実家では「お客さま」にならざるを得ず、夜中や朝方、朝の支度の時まで「お客さま」に居られては妻の母親は余計な気を使うだろうと思ったからこそ、記事の男性投稿者は「休日前なので泊まって欲しい」という妻からの頼みを断ったのだろうと思います。

男性投稿者は育児から逃げている訳ではないと思います。
むしろ、男性投稿者の妻こそ里帰りをして実親に甘え、育児をしながらの生活から逃げているとも言えるのです。

あの怒濤の新生児育児を夫婦だけで乗りきった、という方をインターネット上ではしばしばお見受けします。そうした方々に比べたら、里帰り出産している妻こそが「現実の育児から逃げている」事になるのではないでしょうか。
私は里帰り出産中、21時以降は赤子と自室に移動し、夜間は一人で新生児の世話をしました。しかし夜が明け、実母が家族の朝食を作り終えたならば赤子を実母に預け、私はゆっくりと実母が作ってくれた朝食を食べ、時にはそのまま午前中は一人で寝かせて貰った事すらあります。
この男性投稿者の妻が実家でどれ程の家族からの協力を得られていたかは分かりませんが、少なくともワンオペや夫婦だけで新生児育児を乗りきったという方々に比べたら、「母親である自分の世話をしてくれる誰かがいる」「母親である自分が倒れても赤ちゃんのお世話をしてくれる誰かが何人かいる」という安心感は何物にも変えがたいと思うのです。

男性投稿者の妻は今、「自分が一番大変」だと思っているのではないかと思います。確かに産後ガタついている身体での24時間育児は大変です。しかも自分の意思以外で寝られない状態にさせられるのですから、寝不足で苛立つもの分かります。更に言えば、赤ちゃんが泣いても母親なのにその理由が分からない、というストレスも妻にはあるかと思います。おむつを交換してもお腹を満たしてあげても昼夜関係なく泣く生き物を相手にする事は精神的にも肉体的にも辛いものがあります。
しかし、男性投稿者も仕事を終えて疲れた身体でありながらラストダンジョン(妻実家)に来てくれているのです。HPに余裕はあっても、MPはギリギリの状態かも知れません。もしも面倒な顧客に振り回されたか、悪質クレーマーと戦ってから妻と子に会いに来てくれていたのであれば、来てくれただけで御の字とは思えないでしょうか。

男性投稿者の妻や、彼を非難するコメントを書き込んだ女性たちは、育児の事にしか目が行っていないのではないかと思いました。
初めてママになり新生児育児をしている時は、女性の生活はほぼ育児の事で埋められます。頭の中は赤ちゃんの事でいっぱいで、仕事をしてきた筈の夫の事も「育児にどれだけ関わっているか」の部分しか見えなくなっているのだろうと思います。

「貴方は育児から逃げてるし自由な時間があっていいわね」

と男性投稿者の妻は言ったそうです。
妻実家に妻と赤ちゃんがいられては、男性には育児へ手の出しようがないだけで、男性は何も育児の良いとこ取りをしたい訳ではないと思うのです。
育児をしようとも、参加させて貰えない所に妻と赤ちゃんがいる男性が出来る事は、妻と子どもの生活費を妻実家に入れる事と、妻をねぎらう事に他なりません。
妻と赤ちゃんが自宅に帰還し、男性が育児に関われるようになってから初めて自分の夫が「育児から逃げてる」かどうかを判断してやってはいかがかと、男性投稿者の妻に思いました。




なお、私の実家をラスボスの居城だと認識している私の夫は、私があなたの実家に行く時も私は同じような気持ちなのよと言ってから(本気で言った訳ではない)夫実家から帰宅した後は、かなり私をねぎらってくれるようになりました。
どれだけ私実家が苦手なのか。