xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

人生を変える行為

生理開始予定日から一週間が経過しても、なかなか私から経血が出てくる気配がなかった事が先日ありました。
生理痛に似た痛みは下腹部に感じていましたが出血は始まらず、乳房も何だか重く感じました。心なしか体温も高いような気がする。

…あれ? 妊娠した?

そう思った瞬間、嬉しさもありましたが、それよりも、今後予定していた色々な物事が思う通りに叶わなくなる事に愕然としました。
いま妊娠したら春にはお腹が大きくなる。二人いる子どもは三学年差。三月に上の子の幼稚園卒園、四月に小学校入学と下の子の幼稚園入園を控えている今、お腹が大きくなったら手持ちのフォーマルウェアが着られなくなる。出費を抑える為に体型維持を心がけていたのに、その努力は水の泡となり、新しくマタニティのフォーマルウェアを用意しなければならなくなる、うわ面倒だなと真っ先に考えました(レンタルがある事はマタニティ服の通販カタログで見た事がある)。
またこれから子どもたちの入学入園に伴い、様々なイベントが待ち受けています。小学校の就学時健診では親と子は引き離され、親は三時間あまりの講演を聞かされるらしい(お子さんが我が子とは異なる小学校に進学する、もうその健診が終了しているママさん情報)。三時間も座っている事は大人でも苦痛だったらしく、幼児を連れている人はとても大変そうだったと聞いている中で、私は下の子を連れ、つわりが最も厳しいであろうタイミングでそれに出席しなければならなくなる。
下の子の就園前検査は流れを既に知っている上に、三年間上の子と通った幼稚園で行う事なので見知った先生も多く何の心配もありませんが、消耗品の購入会や制服の受取り、一日体験入園、クラス発表などがあり、少々面倒。
何よりまたあの待ち時間の長い妊婦健診に行かなければならない、というのが億劫でなりませんでした。幸い下の子を入園させた後は午前中に私一人で産科に通う事が出来ますが、私の住む地域で分娩が出来る数少ない病院であるそこは、午前10時の予約であっても帰宅が午後になる事はよくありました。
私は第一子の時に妊娠糖尿病で緊急入院をしたような脆弱な膵臓の持ち主なので、分娩は今回も同じ病院である事が望ましいと考えられます。そもそも産科が少ない地域なので多くの妊婦にとって健診に通うならその病院くらいしか選択肢はなく、おかげでとても混みます。希望した日に健診の予約を入れる事も難しい時があり、何より妊娠糖尿病の検査には時間がかかります。第二子の時には辛うじて免れましたが、検査結果で血糖値が高く出れば私は今回も入院しなければならなくなるでしょう。また妊娠中は何が起きるか分からない為、今度は他のトラブルで入院する可能性だってゼロではないのです。
幼稚園に入園したての頃は、一号認定の子の場合は午前中でお迎えの時間になります。妊婦健診がある日は念の為に下の子は幼稚園の預かり保育をお願いするとして、では上の子は?
小学校も入学したての頃ならば午前帰宅でしょう。また学校行事次第で早い帰宅の日もあります。学童保育に空きがあれば良いのですが、妊婦健診を理由に申し込めるのかと不安になりました。いくら私の実家が車で30分圏内とは言え、そう何度も実父や実母に頼るのは申し訳ない。しかし肝心の夫は朝が早く帰宅は遅いので子どもたちの生活を滞りなく任せる為には何の戦力にもならないでしょう。
そもそも私は夫の生活を変えさせない為に専業主婦になっているのです。会社に何かトラブルがあれば動かなければならない夫には、出来れば仕事に専念して欲しいのです。

いま妊娠したなら出産は夏になるかな、なら子どもたちは夏休みになる頃だから案外丁度良かったのかも知れないな、何日かは休ませる事になるとして、また実家の世話になれるかな。いやいや、小学生は夏休みもプールがあるのではないか?
しかも我が子が通う幼稚園ではPTA活動は共働きや妊婦、未就園児などお世話しなければならない家族がいる家庭は色々免除されましたが、小学校ではそういう配慮は無いと聞いていました。実際、我が家の上の子と同級生の子が真ん中にいるママさんは赤ちゃんの下の子を連れて頻繁に小学校に出掛けています。もしかしたらプールの監視員や登校時の横断歩道の見守り等もPTAの仕事としてあるのかも知れない。夫が激務で頼れない以上、それをするのは臨月や産後すぐ、新生児を連れた私しかいない。果たして可能なのか?

そもそも二人目の里帰り出産の時は、上の子は当時3才でトイレの時は便座に座らせてやらねばならなくはありましたが、大人しく手のかからない子だったからこそ実母も面倒が見られたのです。しかしそれでも幼児の相手は疲れたと聞いています。上の子は今もそれなりに穏やかな性格ですが、今度は元気が有り余る下の子が追加されるのです。数年経ち実母も年をとりました。私が入院している間に二人の面倒を見られるのでしょうか。

また、先日は親子四人でとあるテーマパークに出掛けたのですが、私が妊娠したなら、そして赤ちゃんが生まれたなら暫くは遠出が厳しくなるでしょう。インドアな上の子はともかく、外出が大好きな下の子は出掛ける機会が減る事に、きっと不満が爆発するに違いありません。
それに、と下の子の事を思った時に胸によぎったのは、「栗は真ん中の実が小さい」という言葉でした。
三人きょうだいでは、上の子の事は親も何もかも初めてなので関心がいく。三人目の子はいつまで経っても「一番小さい子」なので親も心を配る。結果、間に挟まれる真ん中の子は親からの関心が薄くなりがちになる、という話です。
今いる下の子に寂しい思いをさせたくない。私は子ども全員に平等に接せられる程、器用ではありません。それもあるからこそ私は子どもを三人持つ事にためらいがあったのです。

それでも、もし妊娠したのなら産みたい。案ずるより産むが易しとは正にこの事ではないか。
子どもは二人が至高であるとこれまでに書いた事がありましたが、正直に言えば赤ちゃんのお世話はもう一度体験したかった。これまでの育児では一人目の時は大変でも楽しく、二人目の時には更に楽しめる余裕がありました。聞けば三人目を育てている時は孫を育てているような感覚になる程に余裕があるという。つまり赤ちゃんの可愛らしさを存分に楽しめるのは三人目育児という事になり、ここにきて私もとうとうそれが経験できるのかと胸が踊りました。

妊娠したかも知れない。そう思った時に上記の内容が私の頭の中に一気に押し寄せてきたのです。不安もありましたが、嬉しさもあった。あと数日したら妊娠検査薬で検査し、陽性判定が出てから夫に話そうと思っていたのですが、そんなに遅くして、もし子宮外妊娠だったならと思った途端に不安の方が大きくなり、あまりの不安に押し潰されそうだった朝、子どもたちが起床する前のタイミングでとうとうフライングで夫に打ち明けてしまいました。
これまでの妊娠では早々に病院に行ったせいで妊婦健診の補助券を使い切ってしまい、後半の数回は自費診療になった経験がありました。一回5000円を越えるそれはなかなかに手痛い出費だったので、可能ならば健診の回数は14回に収めたい。つまりは発覚を遅らせるつもりでいたのですが、子宮外妊娠は受精卵が大きくなってからの発覚では激痛だと聞いています。子どもたちが起きて来ない、このタイミングしかない、と意を決して夫に話しました。

夫は仕事が激務で、宝くじで高額当選したらこんな会社辞めてやる、と冗談なのか本気なのか、よく口にしていました。しかし家族が増えれば収入の安定の為にますます仕事を辞める訳にはいかず、もっとストレスを抱えさせる事になるかも知れません。せっかく芽生えた生命を堕胎しろとは言わないだろうとは思っていましたが、仕事の辛さからその選択を提案される可能性も無いわけではありませんでした。
妊娠したかも知れないと思いきって私が話すと、夫は驚き、喜び、覚悟を決め、もっと仕事に励むからと出勤して行きました。実はその日は大きな案件の対応をしなければならない重要な日だったそうです。
そしてその日の昼頃に私の出血が始まり、結果、ただ生理開始が遅れていただけという事になりましたが、生理が遅れている、と気付いてからの数日は本当に不安で心が押し潰されそうでした。

既婚者で、夫も新たな生命の誕生にまず反対はしないだろうという環境にいる私ですら、妊娠出産によって今後予定していたあらゆる事柄が崩れ去るあの心地は堪らないものがありました。
ならば未婚で未成年者の妊娠の場合、その不安はどれだけのものかと心が痛みます。このような事件がありました。


新生児窓から放り殺害疑い 19歳の母逮捕 岩手
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.sankei.com/affairs/amp/191010/afr1910100042-a.html%3Fusqp%3Dmq331AQNKAGYAdjK7ZrcwPb0Sw%253D%253D

自宅トイレで出産した男児を窓から外に放って殺害したとして、岩手県警は10日、殺人容疑で同県矢巾町の無職の少女(19)を逮捕した。容疑を一部否認している。

 逮捕容疑は5月1日午前7時半ごろ、一戸建て住宅1階トイレの窓から、産んだ直後の男児を投げ落として殺害したとしている。

この事件のソースを改めて探す為に【赤ちゃん 窓 捨てる】とインターネットで検索した所、この事件とは別に、生まれたばかりの赤ちゃんが自宅窓から捨てられた他の事件も発掘されました。窓から投げ捨てるなんて、と事件を知った時に行動の幼稚さを哀れに思いましたが、動揺のあまり目の前から赤ちゃんを無くそうと思ったならば、そう珍しい行動でもなかったのかも知れません。

無かった事にしたくて目を背け続けた結果なのか、初めから、産まれてから殺そうと思っていたのかは分かりませんが、それはどれだけ辛い妊娠生活だったのでしょう。
この少女は妊娠が発覚すれば家族に怒られる環境だったのでしょうか。未成年という事で保険証は家族が保管しており、手持ちのお金も無くて、一人で病院に行く事も出来なかったのでしょう。また産婦人科も恥ずかしく恐ろしい所に思えたのでしょう。女にとって心強い産婦人科は、けれど行った事の無い者にとっては敷居がとても高く感じられる場所です。女医が少ないので、男性が泌尿器科や肛門科を訪ねる以上の恥ずかしさもあると思います。
堕胎手術は服薬では済まないので、その処置は恐ろしく、痛いものに思えたのでしょう。もしかしたら産婦人科は男性とペアでなくては行けない場所とも思ってしまっていたのかも知れません。少女は家族に妊娠の相談が出来なかった程なのですから、きっと相手の男性にも言えるような状況ではなかったのでしょう。

少女はもしかしたら赤ちゃんをトイレに流そうとして、流れなかったので咄嗟に窓から外に投げたのかも知れません。とにかく、自分の目の前から消してしまいたかったのだろうと思います。
どうしよう、どうしようと何ヵ月も悩んだあげくの行動だと思うと、窓から投げ捨てるだなんて安直な、考えが及ばない子どもだから、きちんと病院で適切な処置を受けようと思わなかったのだな、などと、冷笑する気分にはなれませんでした。

女にとって妊娠出産とは人生を変えてしまうものです。それなのに任意で妊娠する事は出来ず、初期のうちは何の感覚も分かりません。自分の身体に無頓着であれば、あっという間に妊娠週数は進んでしまいます。
生理開始日が妊娠初日、妊娠週数カウントスタートでもあります。ホルモンの変動は同じ結果を身体にもたらし、出血が始まるまでは妊娠なのか生理なのか、自分自身ですら判断がつきません。いつか生理が来ると信じて、私が不安に思ったあの数日を、この少女は何ヵ月も過ごしていたのかも知れません。

恋愛至上主義になり、年頃になるとお付き合いしたなら性行為にまで進む事が普通になりました。少なくとも、私が読んできた少女漫画は読者層が高い作品ほどその行為に及ぶものがありました。
妊娠したくないならば行為をしなければ良いだけなのですが、お付き合いをしているのに行為をしない、という選択がそもそもし難いのです。
男性には妊娠という結果が訪れない為、性行為を単なる行動の1つとしか捉えていないのではないかと思います。しかし、ひとたび妊娠すれば女の人生は劇的に変えられてしまいます。産むと決めたならば当然、そして産まないと決めても心身に大きな影響を与えます。

それは人生を変える行為。家族が増える幸福をもたらす時もあれば、犯罪者になる時もあります。
妊娠は少女一人では出来ません。その結果は少女とその家族だけが負うものではないと思います。相手の男性の人生も変えられるよう、特定と、場合によっては処罰化を望みます。




余談ですが、もし今回、私が3人目を妊娠していたならば、上の子たちの時に書いていた妊娠記録ノートや母子手帳ケースを同じデザインで揃えられなくなってしまう(100均の商品は一期一会)。
もし3人目が女の子だったら自分の妊娠の時に興味を持つかも知れない。姉兄のデザインは一緒なのに自分だけ異なるデザインだったら「予定外の子だっのかな」と感付かれてしまう、というのも不安の1つでした。