xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

愛情があるからこその帝王切開

私自身は2回の出産とも誘発による経膣出産でしたが、一人目の時には予定日を5日超過したあたりの診察日に、誘発分娩だけでなく、帝王切開の可能性も視野に入れるよう医師から言われました。妊娠41週を過ぎると胎盤の機能が落ちるので、赤ちゃんに危険が迫る前に取り出さなくてはならないからだそうです。

帝王切開は「何の苦労も無しに赤ちゃんを産むもの」というような誤解をしている人が少なくないのか、時としてママさんを傷つける発言をする人もいるようです。
またママさん本人も帝王切開を「正しいお産ではない」と卑下する人がいるようで、「HUGっと!プリキュア」でも、立派なママになろうと思っていたのに帝王切開になってしまった、と嘆くキャラクターが登場しました。

私自身は帝王切開に関しては、術後の痛みの怖さはありますが、いつ来るか分からない未知の痛みである陣痛に何日も怯えるよりも、この日に切腹するので覚悟して下さい、と言われた方が気分的に楽なように感じていました。産み方で母性がどうにかなるという意識はまったくありません。
しかしインターネット上ではしばしば帝王切開についての話題があがり、今回も帝王切開経験者に対して思いやりの無い発言をした人の事が話題になりました。


「生まれたよ!」と友達へ出産報告をしたら…「ありえない返事」に批判の声が殺到
https://citrus-net.jp/article/89056


出産報告をした投稿者に対し「帝王切開で産んだ子には愛情がわかないのでは?」と言った友人がいたそうです。
どうして経膣出産をしないと母性が育たないだの、子どもへの愛情がわかなくなるだのと言われているのでしょうか。
そして、なぜ帝王切開後の痛みを人は「無いもの」として扱うのでしょうか。

そもそも緊急帝王切開の場合には陣痛も経験します。私の友人は私に「破水した。これから病院に行く」と連絡してから2日を過ぎても、出産を知らせるメールを送ってくれませんでした。さては新生児のお世話で疲労困憊なのだろうなと思っていたら、実は丸1日近く陣痛に苦しんだ後で緊急帝王切開になり、大きな総合病院に移送されて赤ちゃんを取り出してもらい、スマホを操作できるまでに回復したのが私に破水の連絡をしてから3日後だったのです。
いつ来るか分からない陣痛の恐怖に耐え、破水のショックと破水後の不安を抱えながら産院へ行き、陣痛の痛みに何時間も耐え、緊急帝王切開だと告げられ心の準備もないまま上る初めての手術台への恐怖を越え、術後の痛みや導尿カテーテルの不快さに耐え、待望の赤ちゃん誕生なのになかなか思うように身体を動かせない状態になった私の友人は、子どもは一人っ子になってしまうだろうけれど、そのぶん目一杯愛情を注ぐと宣言し、その通りにしています。

私は最終的には誘発分娩で出産しましたが、帝王切開も視野に入れて医師は動いて下さっていたので術前検査も受けました。
妊婦検診とは別に新たに採尿し、採血管5本もの血を採られ、出っ張ったお腹のせいであごを載せる部分になかなか顔が届かず四苦八苦しながらレントゲン撮影をしてもらい、心電図の検査も受けました。
これだけの準備をし、おそらく手術当日は様々な誓約書にサインもするのでしょう。身体には一生ものの傷跡が残り、術後の癒着の恐怖だってあります。何より、可愛い我が子を抱っこしようと姿勢を変えただけで長いこと傷口が痛むのです。帝王切開を受けた方こそ、自分の身を切り裂いてまで我が子を優先して手術台に上るのですから、経膣出産の人に負けない愛情が子どもにあると言えると思います。

帝王切開は母子のどちらかに危険がある時に実施されます。そして赤ちゃんに危険がある場合にも、そのリスクは赤ちゃんの分まで全て母親が背負います。我が子の為にお腹を切る事を受け入れて手術台に上る母親を前に、母性がわかないのでは、などという言葉はナンセンスだと思います。むしろ新生児を遺棄する母親失格者こそ全員経膣出産なのではないでしょうか。

我が子の身を案じているからこそきちんと医療機関にかかり、安全にこの世に産み出してやりたいからこそ医療の手を借りるのです。我が子に愛情があるからこそ、子どものリスクも自らに背負わせ帝王切開を受ける母親たちは、その勇気を賞賛されて良いと思います。

生まれた子どもは、自分が産道を通ってきたのか帝王切開だったのかなど知りもしません。お産は無事に生まれればそれが重畳だと思います。