xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

人の振り見て

男性から見れば、女性は家事だ生理だ妊娠だ育児だと、仕事から逃げる口実が数多くあって羨ましいのかも知れません。
勿論、別にそれらに「逃げて」仕事への責任を放棄しているつもりは女性には無いかと思いますが、大黒柱であり続けなければならないと常に重圧を感じている男性にとっては、女性はお気楽そうに見えるのではないかと思います。
ならば仕事から逃げられない男性に対してその収入をけなす事は女性にとっては、いか程の罵倒に相当するのでしょうか。
痛ましい事件が起きました。


外出自粛“家飲みゲンカ”平手打ちで妻が死亡 夫がキレた一言
https://bunshun.jp/articles/-/37457?page=1

事件当日も飲みながら仕事の愚痴をこぼしていた妻。生活への不安から話は夫の収入にも及び、とうとうこの一言を口にしてしまう。

 あんたの稼ぎが少ないのよ――。

私は結婚を機に退職し、下の子が三歳になった今でも専業主婦のままです。仕事を持っている既婚女性の割合が専業主婦を逆転した現代において、私の事を健康な成人でありながら仕事をしていないニート、あるいは寄生虫と評する人もいるかと思います。
結婚前の私は夫と同じ会社で勤務していた為、当時の私よりも高い賃金を得ている夫の事は純粋に尊敬しています。世の中に何千万円という年収の人がどれだけいようと、少なくとも当時の私よりも高い収入が夫にはあるのですから、その数字を他人と比較してどうこう言う権利は私には無いと思っています。もしも少ないなと思ったならば、私が社会復帰すれば良いだけなのですから。しかし復帰したところで、仮に以前と同じ会社に就職したとしても、以前のような給与には戻れない事くらいは容易に想像出来ます。だからこそしっかり収入を得てきてくれる夫を私は尊敬しているのです。

2020年4月5日に東京・江戸川区で起きた初老夫婦の痛ましい事件の切っ掛けは、妻からの「あんたの稼ぎが少ないのよ」だったそうです。
記事によると妻はケータリング会社に勤めていましたが、新型コロナウイルスの影響で出勤回数が減り、収入が減る事を気にしていたそうです。
元々の夫婦仲はとても良好で、一緒にお酒を嗜む時間を楽しんでいたようです。ならば妻が口にした「あんたの稼ぎが少ないのよ」という発言は、妻からしてみれば少しの不安の吐露と、ほんの軽口だったのでしょう。「お前の収入も減ったしな」という反論を期待し、「コロナが早く収まれば良いね」とオチをつけるつもりでいたのかも知れません。ところが実際に待っていたのは激高による夫からの平手打ちで、床に頭を打ち付けた事が原因の急性硬膜下血腫による妻の死亡でした。

女性はどんな男性とお付き合いをしているか、既婚か未婚か、結婚を何歳の時にしたか、子どもは何人いるか、子どもはどこの学校に在籍しているか、持ち家か賃貸か等のスペックが他の女性とのランクの上下を決める事があるかと思います。自身が努力の末に得たものではなく、配偶者や子どもが与えてくれたものまで女性は女性同士の戦いの手札にしがちです。
その一方で男性はと言うと、収入の高い低いくらいしか男性同士では競い合う事がないのではないかと思うのです。つまり、女性が思っているよりもずっと、男性は自身の収入を気にしているのではないでしょうか。
大黒柱である事を常に求められて育った年代の男性は、妻も働きに出なければならない自身の収入にも後ろめたさがあったかも知れません。仕事も楽しい事ばかりではなく、悔しい思いや辛い思いをする事もあっただろうと思います。懸命に働き、得た収入を「少ない」と妻に言われる事は、相当に尊厳を傷付けられるものなのではないでしょうか。
子どもが産めない女性を石女(うまずめ)と蔑称する言葉はありますが、男性不妊も広く知られるようになった昨今では、私の希望的観測ですが、かつて程は女性は言われていないのではないかと思います。また、夫婦だけで生きていく幸せもだいぶ認知されつつあるように思います。そもそも不妊は身体的特徴の一つなので、努力では補えないものを貶す事はまた別の問題です。女性にとってのこの蔑称も、男性の収入をけなす暴言には相当しない気がします。
収入は努力すれば必ず上がるものではありませんが、努力は必要です。また努力次第でどうにかなると思っている人も中にはいるかも知れません。特に、社会経験に乏しい人ほど「勉強しなかったせいで良い職種に就けなかったのだろう、低収入は自業自得だ」と思っているかも知れません。しかし頑張ったところで社会情勢次第では正社員への間口は減り、良い会社に就職しても収入が減る事すらままあります。
既に頑張っている人に「頑張れ」と言う事は酷な事だと、女児向けアニメのプリキュアでも触れています。事件を起こした男性は、ずっと頑張っていたのだろうと思います。しかし頑張ったところでどうにもならない壁がある事を自覚し、ずっと苦しんでいたのかも知れません。新型コロナウイルスの感染を拡大させない為の終わりの見えない自粛生活で自分でも思いの外、心が疲れてしまっていたのかも知れません。
女性は不安を誰かと共有すれば心が軽くなる人が多いのか、大した事でなくても愚痴を言いやすい印象です。一方で男性は不安を抱えていても誰かに打ち明ける事が苦手なのか、自分の胸の内におさめておいてしまう人が多い印象です。また男性は女性から愚痴を聞かされた時に、問題解決の提案をしてしまいがちだそうですが、それはつまり男性は「愚痴」を自分がされた「相談」だと感じるからではないでしょうか。
「あんたの稼ぎが少ないのよ」
これを、どうやったらあなたの収入は上がるのかという問題提起をされたかのように受け止め、答えが出せないもどかしさと、これまでの仕事上で味わってきた様々な思いが過り、激高してしまったのでしょう。

女性が不快な事をされると、今やセクハラだ何だと、○○ハラスメントと名前を付ける事が出来るようになりました。しかし、男性が「男性らしからぬ」振る舞いをした時に男らしくない、と誰かが言った時に、それをセクハラだと男性は訴える事が出来るでしょうか。「か弱い女性」は、「強い男性」には何を言っても許されると勘違いしてはいないでしょうか。
より高い収入を得る事が男性のステータスであるとするならば、あまり高い収入でない男性と夫婦になる事を選んだ女性は、それについて言及してはならないような気がするのです。今回の痛ましい事件は、女性は男性の大変さを考える切っ掛けになるのではないかと思います。
特に、私自身が夫の尊厳を傷付ける事などないよう、自分の言動に気をつけていこうと思いました。