xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

預けろと言ったり預けるなと言ったり

先日会った知人の一歳のお子さんのあまりの可愛さに、私の「三人目の子がいたら」妄想の頻度が上がりました。そのくらい一歳の子どもという存在は愛らしいものです。
そんな子どもに何故、という事件が発生しました。

預かった1歳児にやけど 容疑で男2人逮捕
https://www.iza.ne.jp/smp/kiji/events/news/200804/evt20080400410002-s1.html

  知人女性の長男(1)にやけどをさせたとして、大阪府警捜査1課は3日、傷害容疑で、堺市西区浜寺南町の会社員、丸本翔真容疑者(21)と同区鳳中町の無職、温井秀斗容疑者(23)を逮捕した。
5月12日午前5~7時ごろ、大阪市内のマンションの一室で、知人の20代女性の長男にやけどをさせたとしている。長男は顔や腹、足などに複数のやけどをしていたが命に別条はない。

よくある虐待のパターンと似ていますが、今回は同居していた内縁の夫、という訳ではなく、二人の男性が逮捕されており、逮捕された男性二人は母親の友人だったそうです。このニュースがヤフーに掲載された際には、知人男性に一歳の子どもを預けた母親を責めるコメントが幾つも投稿されていました。
曰く、
「よくも一歳の子を身内以外に預けられるな。」

「なぜ他人に1歳児を預けて仕事に出かけるのか。」

f:id:xharuko:20200811101212j:plain

事件が発生したのは午前5時~7時という事なので、母親は夜間に働きに出る為に子どもの世話を知人男性に任せたのだろうと思います。誰もいない家に一歳児を放置しておく訳にはいかないと母親は思ったので、知人男性らを頼ったのではないでしょうか。報道によると男性らは既に何回か子どもの面倒をみていたそうです。
大人であれば子どもの面倒くらい見られるだろうという甘い誤算が母親にあった事は否めませんが、それでも、子どもを一人きりで放置させてはならないという使命感がそこにはあったのではないかと思います。

その一方でこのような事件もありました。


16時間放置し3ヵ月の乳児が死亡…母親の「悲痛な生活環境」
https://friday.kodansha.co.jp/article/125122

前日の夕方から外出していた自称アルバイトの坂元愛容疑者(30)は、7月23日の朝9時半ごろ、東京・台東区の自宅マンションに戻り驚愕した。生後3ヵ月の娘が息をしていないのだ。坂元容疑者はあわてて119播通報。女児は病院に搬送されたが、まもなく死亡が確認された。

こちらは赤ちゃんを一晩一人きりにしておき、朝に母親が帰宅したら、赤ちゃんが亡くなってしまっていたというニュースでした。こちらの報道に対しては「なぜ誰にも預けなかったのか」というコメントが多く投稿されていたかと思います。

子どもを自宅に一人きりにしておく事は虐待に繋がりますが、そうしなければならない事情がある人もいます。報道によると、こちらの母親も生活費を稼ぐ為に外出していたそうです。
新型コロナ対策で急遽休校が決定した時に明らかになったのは、学校という、子どもを日中「預かってくれる」施設が無ければ、多くの母親は働けないという現実でした。誰かが子どもの世話をしなければならず、その誰かとは殆どの場合は母親が該当します。しかしシングルの場合には子どもの世話ばかりしていては稼ぎ手がいなくなってしまいます。誰かに預かって貰えなければ、子どもは自宅に一人きりにしておくしかありません。特に生後3ヶ月の子どもを預かってくれる施設は限られてしまうのではないでしょうか。
我が家の例で言えば、上の子が幼稚園年少の時の遠足の際に、当時5ヶ月だった下の子の預け先に難儀しました。下の子を産んで以降きちんと相手をしてやれなかった上の子の初めての遠足だったので、完全に上の子を優先したいと私は思いました。また、その行き先で赤ちゃんの授乳やオムツ換えが安心して出来るかを考えると、下の子を連れて行く事は難しいだろうとも思ったのです。その日は夫は仕事から抜けられず実家も頼れなかったので、保育施設の一時保育を利用しようと私は思い付きました。
しかし、下の子の新生児訪問の際にやって来た保健師さんから教えて頂いた保育園に問い合わせると、その施設では一時保育は子どもが10ヶ月になっていないと預けられないと断られてしまいました。インターネットで調べると、私が住んでいる自治体にある保育園やこども園は生後10ヶ月からが一時保育の対象年齢となっていました。それでも何とか企業型の保育施設を見つけ、事前に申し込みを済ませておき、上の子の遠足の集合時間前に預け、遠足解散後すぐに下の子の迎えに行きましたが、五時間程度の預かりで7000円の請求を受けました。

子どもを一人きりで自宅に放置するくらいならば誰かに預ければ良いのに、と簡単に思うかも知れませんが、預けたなら預けたなりに料金が発生するのです。そもそも生後3ヶ月の子ならば預かって貰える施設が限られてしまうのです。
先に挙げた大阪の事件では、母親は知人男性二人に一歳の子どもを預けました。これもきっと、正規の保育施設に夜間子どもを預ける事が出来なかった、あるいは出来ないと母親が思った、または料金が高額すぎて支払いが難しい(支払いをしたくない)と母親が思ったので、知人男性を頼ったのでしょう。

預けたなら預けたなりに責められ、預けなければ虐待だと言われる。仕事は日中のものだけでは無く、夜間に働かざるを得ない人々もいます。夜の仕事に就く事が悪いと言うならば、そうした仕事の存在を求める人もいる社会にも問題はある筈です。いつでも安心して幼い子どもを預けられる施設が充実している訳でもないこの社会において、シングルで子どもを育てる事はとても難しい事だと思います。シングルで子どもを育てようと思う事がそもそも間違いだと言う人もいるかも知れませんが、私だって夫に万が一の事があれば突然シングルマザーになる訳なので、シングルである事を責めるのは土台がおかしいのです。

そもそもシングルでなく、夫がいて専業主婦をしている女性でも、子どもから一時的に離れなければ産後うつになってしまう事もあります。これまであった多くの実母からの乳幼児への虐待事件は、一時保育の機会があればその件数はだいぶ少なかったのではないかと思います。
乳幼児への虐待事件が起きずに済むよう誰でもいつでも子どもを預けられる一時保育の施設が必要なのに、夜間も授乳やオムツ換えが必要な生後10ヶ月未満の時には昼間でだって簡単に子どもを預かっては貰えないのです。
これは、母親ならば愛情で全てカバー出来るだろうという誤解が未だ解けていないせいではないかと思います。

東京・台東区の一件では、赤ちゃんは16時間放置しただけで亡くなってしまう事に衝撃を受けた人もいるのではないでしょうか。亡くなった生後3ヶ月の子どもの死因は乳幼児突然死症候群SIDS)だったのかも知れませんし、寝返りをうっての窒息死だったのかも知れません。今回の件では原因は未だ分かりませんが、我が子がそうならないように今夜も多くの親御さんは自身の睡眠時間などを削って育児に奮闘しているのでしょう。

子どもを保育施設に預けても愛情不足だと言う人々がいなくなり、誰でもいつでも安心して子どもの事を任せられる施設が各地にあれば。
「赤ちゃんは皆で育てるの」
女児アニメの「プリキュア」にて主人公はこのように言いました。
この「皆」とは社会の事であり、家族や地域の人々だけでなく、保育施設も含めての事だと思います。
母親だけでなく、「皆」で赤ちゃんを育てる事が普通になれば、大阪で起きた知人男性による虐待事件の時にも、知人男性に子どもを預けて働きに出ていた母親が責められる謂れはいないのにと胸が痛みます。