xharukoの日記

妊娠、出産、育児の中で思った事をつれづれ書きます

誰かに頼るということ

上の子どもが小学生になり、私は小学校PTAママになりました。さっそく役割として朝の交通指導という名の横断歩道での旗持ちをする事となり、参加してきた時の出来事です。
その日は雨天で、ある低学年の女の子が私の担当する横断歩道の赤信号で止まった時に、大人でも傘をさし続けようか迷う小雨になりました。あと5分も歩けば学校に到着というタイミングでもあったので、信号で立ち止まった事を契機にその女の子は折り畳み傘を閉じようとしました。低学年なので畳めるかなと心配して見ていたところ、その子は私に傘を差し出して来ました。

「…やって?」

女の子が私に折り畳み傘を閉じて欲しいと頼んできたので、私は横断旗をその子に持ってもらい、信号が変わらない間にその子の折り畳み傘を畳んでやりました。女の子らしい、縁取りにレースがあしらわれた可愛らしい傘でした。レースが少しかさばるので、綺麗に畳まなければスナップボタンが届かなそうな代物です。
以前、我が子と一緒に下校してきた子も上手に折り畳み傘を畳む事が出来ず苦戦し、私が畳み方を手伝ってやった事があるので、やはり小学校低学年の子には折り畳み傘の扱いは難しいのだろうと思います。私の子どもは自分で開け閉めが上手に出来ない事が嫌だからと、折り畳み傘を持ってくれません。そもそも入学当初は普通の傘ですら上手に閉じられず、私の子どもが手伝ってやった子も何人かいたそうです。
下校時に使用するならまだしも、本人が畳む事が出来もしないのに登校時に折り畳み傘を使わせるのは保護者としてどうなのかとは、実は内心で思いました。これまでその子は、もしかしたら学校の先生に折り畳み傘の閉じ方をお願いしていたのでしょうか。

その女の子と私には面識はありません。しかし○○小学校PTAと書かれた上着を着ていたので、彼女は私の事を学校の関係者だとは分かったのかも知れません。しかし、その程度で子どもだった頃の私や私の子どもは、初めて会った大人に同じように頼る事は出来たでしょうか。
聞けば入学して間もない時の雨の日、下駄箱前で何人かの一年生が傘が閉じられずに半べそをかいていたそうです。通り過ぎてゆく上級生や校門にいる先生にでもひと声かければ良いのに、自力で傘を閉じようとして、それが出来ず泣いていたので、同じ一年生だった私の子どもが傘を閉じるのを手伝ってやったそうです。
その一方で、あの女の子は、見知らぬ大人を上手に頼り、折り畳み傘を閉じて貰いました。
困った時に誰かに頼ろうとする事。自分からそのように働きかける事。これは世の中を渡っていく為に必要な能力なのではないでしょうか。

今回はたかが傘ですが、一年生にとっては普通の傘ですら上手に閉じる事は難しく、ただ傘が閉じられないだけで泣いてしまう子もいます。泣いていれば誰かが助けてくれる年齢なので、今はそれでも良いでしょう。私の子どもが声をかけなくても、登校時間が終わり校門にいた先生が校舎に戻ってくれば、きっと気が付いて問題を解決してくれた事と思います。
しかし、もっと成長し、人前では涙を簡単には流せなくなった頃に困難に直面した時、人はどうすれば良いのでしょうか。ただ黙って助けを待っていても、周囲からその人は困っているように見えなければ、誰も声をかけてはくれないでしょう。
何かに行き詰まった時に自分だけで抱え込まず、周囲に助けを求める事は決して恥ではありません。しかし、そうは言うものの、誰に言えば良いのか困る場面に直面する事は私にもこの先にきっとあるでしょう。

誰かに頼ろうと考えられるという事は、自分はその人に受け入れて貰える自信があるとも言えると思います。あの女の子は、私が学校関係者だと見越した上で私に折り畳み傘を畳むよう頼んできたと思うのです。私ならば、自分の依頼を無下にしないという自信があったのでしょう。
それは「自分は愛されている」という自己肯定感から成せる行為だと思います。
自力で畳めもしない年齢の子どもに折り畳み傘を持たせたその子の保護者も、自分の子どもならば上手にやっていけるだろうと信じて送り出したのかも知れません。それはとてつもない信頼感の成せる技だと言えはしないでしょうか。
それに対して私は我が子に、入学前に傘を閉じる練習をさせました。これからは親である私は昇降口まで付いてはいけません。我が子が困らないよう傘の閉じ方の練習を積んだおかげで、我が子は困っていた他の子に手を差し出す事は出来ました。しかし、練習させていない困難に我が子が直面した時には、どうなるでしょうか。
私は私の子どもの力を信じず、良かれと思った行為のせいで逆に成長を阻害してしまったのかも知れません。

何か困った事が起きたならば、自分だけで抱え込まず、周囲の人に相談する。この経験をして事態が良い方向に進んだ事のある子どもは、きっと本当の意味で強い人になれるのではないでしょうか。ならば私たち大人は、そうした経験を子どもたちに沢山させる必要があるように思います。
子どもたちに何か困った事が起きた時に安心して頼れる「近所のおばさん」になりたい。ボトムの裾は雨で濡れてしまいましたが、沢山の「おはよう」の声に癒されて気持ちも晴れやかに、そんな風に思ったPTA活動でした。