フィクションはフィクションだと見抜ける人でないと難しい

私が初めて読んだエロ漫画本は小学校時代の友人女の父親の蔵書でした（笑）
小学生向け少女漫画雑誌でも性教育の冊子が付録でついていたのである程度の知識はその時点で既にありましたが、男性向けに描かれたそれは女子児童の私にはあまりにも衝撃的でした。
小学生の娘を持つ男性の蔵書だった為か、友人が初心者の私に配慮して選別したものだった為かグロテスクなものやアブノーマルな内容のものは無く、コメディ路線やライトタッチなもの、女性の方が積極的なもの等、全てがきちんと女性から同意を得られた状態で事を致す話ばかりでしたが、少女漫画とは異なる切り口だった事が強く印象に残りました。
少女漫画が「あなたもこうやって産まれた」「大切な人とだけする行為」「自分を大事にしよう」そして「こういう時は病院に行こう」という傾向だったのに対し、男性向けのそれは娯楽本らしく「こんなに楽しいものだよ！」とひたすら肯定的に描かれていました。

そしていざ自分が経験する際にその時の内容が頭によぎりましたが、漫画と実際のあまりの違いに拍子抜けしました。回数を重ね出産を経験した今でさえエロ漫画の女性のような気分にはなれません。相性が大事で、私が男性を夫しか知らない事が原因だと言われればそれまでですが、殆どの女性が性行為中に演技しているらしい事は様々な女性誌などで目にします。

ベッドでの演技、どれぐらいする？【女性300人の本音】
https://joshi-spa.jp/32981?display=b

上記の記事を読むと、アンケート結果により「何度かはイクふりをする女性が合計66％にも上る」という事が明らかにされました。
つまり女性は「こういう時はこうするもの」というお手本をどこかで入手してパートナーの前で演技の披露をしている訳ですが、一方で男性も同じように性行為のテクニックをどこかで学んで実践しているのでしょう。ただし現代男性の場合、その情報源がフィクションである事が多いのではないかという事を私は危惧しています。

「顔射が普通と信じてた」お受験優先で性意識に歪みも
https://dot.asahi.com/aera/2014041400025.html?page=1

　日本の大半の家庭では「性」はアンタッチャブルな話題。結果、性的興味が湧いた子どもたちが、手に入りやすい「見本」をうのみにすることもある。

「僕はセックスのクライマックスって、相手女性の顔に精液をかける『顔射』だと信じていました。中1から見始めたAVではそうやってましたから」

　そう語るのはAV男優のしみけんさんだ。しみけんさんは小1から塾で頭にハチマキを巻き、「有名中学合格するぞ、オーッ！」と叫ぶような、お受験生だった。学校で「精子と卵子の生殖ドラマ」は学べても、セックスの仕方はだれも教えてくれないし、湧き出る性欲の抑圧手段も五里霧中だ。男の子たちの性は孤独にゆがんでスタートしているのが現実なのだ。

…

性行為の時に能動的になる事の多い男性にとって性のコンテンツはお手本としての機能も果たしているかと思いますが、女性から見るとそれはあまりにも現実離れしており失笑してしまうものも多数あります。
私が読んだエロ漫画では性行為中の女性が
「そんなに激しくされたら排卵しちゃうーー！」と謎の発言をしました。
人間の排卵のタイミングは性行為と関係ありません。

またマタニティの女性が膣内射精され
「お腹の子も妊娠しちゃうーー！」
紙面の胎児は逆子状態で、しかもその場でいきなり「ぷくっ」とお腹が大きくなりました。私は妊娠５ヶ月くらいまでは妊娠前に履いていたズボンが普通に履けるくらいお腹の出っ張りは目立ちませんでした。胎児いきなり臨月かよ、卵膜なにやってんの、つか逆子かよ！と激しく胸中でツッコミました。

「もっと奥まで！　子宮口まで突いてー！」
出産予定日を過ぎても陣痛が来なかった私は産科医からお産が来るおまじないと称してこの処置をされました。喉の奥から串先が出て来るかと思いました。終わった後は生まれたての小鹿になります。あんな痛みをベッドで経験したいだなんて狂気の沙汰としか思えない。

他の男性の子を妊娠した女性に
「お腹の子に僕が父親だと分かるように毎日（精子を）注ぐよ」
そんな事しなくても生まれてから一緒にいれば父親だと思ってその子は育つから！　だから托卵って起きるんだよ！
他の男に傷つけられた女性をそれでも愛すると誓う素敵な話なのに謎発言で全部台無しにされました。感動を返せ。

他にも現実と乖離した女体の構造の設定を目にする度に、エロ漫画を読んでいる筈なのにまったく興奮せず、こういうフィクションを性の教科書にしている男性がいるからこそ生理の知識もおかしい男性が現れるのだろうなと社会学者のような気分になります。今では逆にそれが面白くなってツッコミを入れる為に読んでいます。
このブログの一番始めに投稿した内容の「エロ本を見ると優しい気持ちになる」とは「うふふ、ここに描かれているのは嘘ばっかりなの、男の子たちはいつ気付くのかしらね」という生暖かい気持ちからです。
ヤフー知恵袋でもアダルトビデオで見た技の内容を挙げ「痛くないんでしょうか？」という質問をした人を目にしました。もちろん回答は「痛いよね」です。

なお、いわゆる「潮ふき」で女性から飛び出てくる液体はオシッコだと解説してくれた番組がNHKにあります。
（「ハートネットTV　教えて！性の神さま」より）

男性が性のコンテンツで目にする内容は殆どがフィクションです。通信販売のニッセンなどでは女性向けの実践DVDがカタログに掲載されているのを見た事がありますが、男性向けにも正しい性の実技勉強が出来る教材はあるのでしょうか。
男性向けに作製されるコンテンツはいずれも娯楽が目的になっており、誇張が多いのではないかと思います。素人同士の営みを隠し撮りした映像が流出するのは、本当は皆がどのような行為をしているのか、脚色されていない実際の行為を知りたいからではないかと思います。
ちなみに幼児二人と一緒に寝ている我が家では静かに静かに行います。子どもが寝返りをした段階で一端中断するくらいお互い冷静です。下の子はまだ卒乳していないので、下の子が寝ぼけながら私に吸い付いてきたら夫がどのような状態でも完全終了です。

男性が実技で使えるきちんとした性の教材があれば息子を持つ母として安心できるのに。かつての日本では若い男性だけが集まり、経験者が話す学習の機会があったそうですが、現代でそれを行えば先輩が面白おかしく誇張した話をするだけの大学サークルのような猥談会になるだけでしょう。かといって父親が息子に教える、というのは異様な気がします。
エロ漫画の巻末に何ページのこのコマは脚色で、実際にはこうです、などと解説を入れてくれれば女性としては助かるなぁ、などとエロ漫画を読みながら思いました。性のコンテンツはフィクションだと理解した上で楽しむもので、お手本になるものでは無いのです。
どうか息子がフィクションを鵜呑みにして、よそさまのお嬢さんに不愉快な思いをさせる人間にはなりませんように。父親や、世の大多数の男性のようにまっとうに育ちますように。

女性器を乾いた指で触るのは眼球を乾いた指で触るのに等しい。そこは粘膜で内臓だ。痛いから保護する為に涙が出るだけで、感じているから濡れてくる訳では無いのだとレイプものに言いたい！
というかレイプものというジャンルは消滅して欲しい！！！